スマートフォンのカメラは、ここ数年で「誰でも綺麗に撮れる」領域を完全に超え、写真表現そのものを変える存在になりました。特に最新フラッグシップであるGalaxy S25 Ultraは、2億画素センサーや高度なAI処理によって、スマホの限界を押し広げた一台として注目を集めています。

しかし、写真にこだわる人ほど気になるのが、撮って出しの美しさではなく、RAWデータをどこまで自在に現像できるかという点ではないでしょうか。ハイライトはどこまで粘るのか、シャドウを持ち上げたときのノイズは許容できるのか、そしてAIはRAWにどこまで介入しているのか。これらはカタログスペックだけでは見えてきません。

本記事では、Galaxy S25 UltraのRAW撮影と現像耐性にフォーカスし、センサーの物理的特性から画像処理エンジン、Expert RAWやLightroomとの連携、さらには競合機種との比較までを整理します。スマホで本気の写真編集をしたい方にとって、S25 Ultraが「最高の素材」なのか、それとも「最高のツール」なのか。その答えを見つけるための判断材料を提供します。

コンピュテーショナルフォト時代におけるRAWの意味

2026年現在、スマートフォン写真におけるRAWの意味は、デジタル一眼カメラ全盛期とは大きく変化しています。かつてRAWとは、センサーが受け取った光の情報をほぼそのまま保存した「未加工データ」を指していました。しかしコンピュテーショナルフォトグラフィーが主役となった今、RAWはもはや単なる生データではなく、高度な計算処理を前提とした編集耐性の高い中間素材へと進化しています。

この変化の背景には、センサーの物理的制約があります。スマートフォンは構造上、受光面積が小さく、単純な光学性能だけではダイナミックレンジや高感度耐性で限界があります。そこでメーカー各社は、複数フレームの合成やAIによるノイズ推定、トーン再構成を撮影プロセスに組み込み、最終的な画質を成立させています。RAWであっても、この計算処理を完全に排除することは現実的ではありません。

Samsung ElectronicsがGalaxy S25 Ultraで示したRAWの方向性は、この潮流を象徴しています。同社の技術資料やAdobeとの協業方針からも明らかなように、RAWは「後処理の自由度を最大化するためのフォーマット」と再定義されています。JPEGやHEIFが完成品であるのに対し、RAWはLightroomやCamera Rawでのトーン調整、ハイライト復元、色補正を前提とした編集用のデータ設計になっています。

観点 従来のRAW コンピュテーショナル時代のRAW
生成方法 単一フレーム 複数フレーム合成が前提
処理介入 最小限 AI・ISPが生成段階で関与
目的 忠実な記録 現像耐性の最大化

重要なのは、これを「偽物のRAW」と単純に切り捨てるべきではない点です。Photons to Photosなどの研究が示す通り、センサーサイズとダイナミックレンジには物理法則による限界があります。AIによる補完は、その制約を実用レベルまで引き上げるための合理的な手段です。実際、DXOMARKの評価でも、RAWベースの編集耐性はJPEG評価とは別軸で議論されています。

現代のRAWとは、光学的真実そのものではなく、編集者が最終表現に到達するための最適解に近づけたデータだと言えます。撮影者が何をコントロールしたいのか、どこまで自分で追い込みたいのか。その意思を受け止めるための余白こそが、コンピュテーショナルフォト時代におけるRAWの本質なのです。

Galaxy S25 Ultraのカメラハードウェア全体像

Galaxy S25 Ultraのカメラハードウェア全体像 のイメージ

Galaxy S25 Ultraのカメラハードウェアは、スマートフォンという制約の中でどこまで物理性能を突き詰められるか、その現在地を示す構成になっています。最大の特徴は、メイン・超広角・望遠という複数のカメラが、それぞれ異なる思想で設計されている点です。単純に全カメラを大型化するのではなく、役割ごとに最適解を選んだ結果だといえます。

まずメイン広角カメラには、前世代から継続してSamsung製ISOCELL HP2が採用されています。1/1.3インチ・2億画素という数値は依然として業界最高峰ですが、画素ピッチは0.6µmと非常に小さく、**解像度と物理的余裕のトレードオフ**を強く意識させる仕様です。Photons to Photosなどのセンサーデータ解析で知られる専門家の分析によれば、画素が微細になるほどハイライト耐性は物理的に厳しくなる傾向があり、S25 Ultraもその例外ではありません。

この制約を前提に機能するのが、16画素をまとめて扱うTetra^2pixel技術です。通常撮影では2.4µm相当として動作し、ダイナミックレンジと感度を補いますが、RAWや高解像度モードではセンサー本来の性格がより色濃く表れます。**高精細だが露出管理がシビア**という評価は、ハードウェア構造そのものに由来しています。

カメラ センサー 特徴
メイン広角 ISOCELL HP2(1/1.3型・200MP) 超高解像度と引き換えに露出耐性は繊細
超広角 ISOCELL JN3(1/2.5型・50MP) 解像力重視、RAWでのトリミング耐性向上
望遠 Sony IMX754 / IMX854 信頼性重視だがセンサーサイズは控えめ

超広角カメラは今回のハードウェア刷新の象徴です。12MPから50MPへの変更は、風景や建築撮影での情報量を大幅に引き上げました。一方で画素ピッチは0.7µmと小さく、Samsungはレンズをf/1.9まで明るくすることで受光量を補っています。DXOMARKのテストでも、解像力の向上と引き換えに、周辺画質の設計バランスが重要になったと指摘されています。

望遠系は3倍・5倍ともにハードウェア据え置きとなりました。Sony製センサーの採用により安定感はあるものの、センサーサイズ自体は小さく、**暗所やRAW現像時の粘りは物理的に限定的**です。これは計算写真以前の問題であり、Samsungが処理エンジン側で補う前提の設計であることが読み取れます。

総合すると、Galaxy S25 Ultraのカメラハードウェアは「万能」ではなく、「役割分担型」です。物理性能の限界を理解したうえで、後段の画像処理と組み合わせることを前提に設計された点に、この世代のフラッグシップらしい割り切りと戦略性が表れています。

メインカメラ200MPセンサーがRAW現像に与える影響

Galaxy S25 Ultraのメインカメラに搭載された200MPセンサーは、RAW現像において明確なメリットと避けがたい制約の両方をもたらします。最大の特徴は、0.6µmという極小ピクセルを2億個並べたISOCELL HP2の構造にあります。**圧倒的な画素数は解像力とトリミング耐性を提供する一方、1画素あたりの受光量は極めて少なく、RAW現像ではその物理的限界が如実に現れます。**

まず解像面では、200MP RAWは風景や建築写真で大きな武器になります。Adobe Lightroomで100%表示しても、遠景の看板文字や細かなテクスチャが保持され、後処理で大胆にクロップしても情報量が残ります。これはGSMArenaやDXOMARKのサンプル分析でも確認されており、特に低ISO・日中撮影では、スマートフォンの枠を超えた解像感を得られます。

一方でRAW現像耐性という観点では、ピクセルの小ささが弱点になります。0.6µmピクセルはフルウェルキャパシティが小さく、**ハイライトが飽和しやすく、白飛びした情報は現像で復元できません。**Photons to Photosのデータが示すように、センサーサイズが小さいほどダイナミックレンジは不利であり、S25 UltraのメインセンサーはISO最低域でも約10〜11EV程度にとどまると推測されています。

項目 200MPフル解像RAW ビニングRAW(12〜24MP相当)
解像力 非常に高い 高い
ノイズ耐性 低い 比較的高い
現像の自由度 限定的 安定

さらにシャドウリカバリーでは、200MP RAW特有の課題が浮き彫りになります。Proモードで撮影した高解像RAWを+2〜3EV持ち上げると、輝度ノイズだけでなくマゼンタやグリーンの色被りが発生しやすく、Lightroomの色かぶり補正でも完全には抑えきれません。DXOMARKやユーザー検証でも指摘されている通り、**高画素ゆえにノイズが細密化し、現像時に目立ちやすい**のです。

このため実運用では、200MP RAWは「万能」ではなく「条件付きで強力」な選択肢になります。三脚を使った低ISO撮影、十分な光量、ハイライト管理を徹底した露出設定が前提となり、それを外れるとビニングRAWやExpert RAWの方が結果は安定します。**200MPセンサーはRAW現像の自由度を広げる魔法ではなく、撮影者の露出判断とワークフローの精度を強く要求する存在**だと言えるでしょう。

刷新された超広角50MPは現像耐性をどう変えたか

刷新された超広角50MPは現像耐性をどう変えたか のイメージ

刷新された超広角50MPセンサーは、Galaxy S25 Ultraの現像耐性を語るうえで最も評価が分かれる存在です。従来の12MPから一気に高画素化されたことで、**解像力そのものは確実に向上**しましたが、RAW現像という観点では単純な進化とは言い切れません。

まず押さえておきたいのは、超広角カメラがISOCELL JN3(50MP、0.7µm)へ変更された点です。センサーサイズはほぼ据え置きのまま画素数が約4倍になり、1画素あたりの受光量は理論上大きく減少しています。Samsungはこれを補うためにレンズをf/1.9まで明るくしていますが、物理的制約が完全に解消されたわけではありません。

項目 S24 Ultra 超広角 S25 Ultra 超広角
有効画素数 12MP 50MP
ピクセルピッチ 1.4µm 0.7µm
レンズF値 f/2.2 f/1.9

RAW現像で最も恩恵を感じるのは、風景撮影におけるトリミング耐性です。50MPのDNGデータは、遠景の建造物や岩肌、樹木の枝葉といった高周波成分をより多く保持しており、Lightroomでの部分切り出しや大判プリント時の破綻が明らかに減っています。これはGSMArenaやDXOMARKの作例分析でも一貫して指摘されている点です。

一方で、ネイティブ50MPのRAWを前提に露出を追い込むと、**シャドウ耐性の弱さが露骨に表れます**。ピクセルピッチ半減の影響により、暗部を+2〜3EV以上持ち上げた際のクロマノイズは12MP世代よりも目立ちやすく、特に均一な空や壁面で色ムラとして現れます。Photons to Photosが示すように、センサー面積が同等であれば画素微細化はダイナミックレンジに不利に働くため、この挙動は理論的にも整合します。

この弱点を緩和するのがExpert RAWです。マルチフレームHDR合成により、超広角でもハイライトとシャドウの情報が統計的に補完され、実効的な階調幅は大きく改善します。Adobe Lightroomでヒストグラムを確認すると、単写RAWでは失われがちな雲の階調や建物の影が、**現像可能な情報として残っている**ことが分かります。

総じて、50MP超広角は「万能なRAW素材」ではありませんが、解像力を武器にした表現では確実に現像耐性を広げています。低感度・十分な光量下で撮影し、Expert RAWを前提としたワークフローを組むことで、この刷新の価値は最大化されると言えるでしょう。

望遠カメラの据え置き仕様とRAW編集時の限界

Galaxy S25 Ultraの望遠カメラは、3倍・5倍ともに前世代からハードウェアが据え置かれています。この判断は日常撮影では安定感につながる一方、RAW現像という観点では明確な限界を露呈します。特に「後処理でどこまで粘れるか」を重視するユーザーほど、その影響を体感しやすい構成です。

3倍望遠は1/3.52インチの10MPセンサー、5倍望遠は1/2.52インチの50MPセンサーを採用しています。どちらもメインカメラと比べて受光面積が極端に小さく、物理的に取り込める光量が不足します。Photons to Photosが示すように、センサー面積とダイナミックレンジには強い相関があり、**望遠ほどRAW現像耐性が低下するのは避けられません**。

レンズ センサーサイズ 画素ピッチ RAW編集時の特徴
3倍望遠 1/3.52インチ 1.12µm シャドウ耐性が低く、持ち上げると色ノイズが出やすい
5倍望遠 1/2.52インチ 0.7µm 解像度は高いが高感度RAWでは粒状感が急増

実際のRAW編集では、夕景や屋内で撮影した望遠カットのシャドウを+2EV以上持ち上げた段階で、輝度ノイズに加えてマゼンタ寄りのカラーノイズが顕著になります。DXOMARKのテストでも、S25 Ultraは望遠域における低照度色再現の不安定さが指摘されています。**これは現像ソフトの問題ではなく、元データのS/N比が不足していることが主因です**。

Expert RAWを使えばマルチフレーム合成によって一定の改善は見込めますが、望遠では合成時の微小なブレや被写体の動きが解像感低下を招きやすくなります。結果として、ノイズは減ってもディテールが溶けるというトレードオフが発生します。Adobeのエンジニアが解説しているように、マルチフレームRAWは万能ではなく、特に望遠では破綻が目立ちやすい領域です。

**望遠RAWでは「後で何とかする」余地が小さく、撮影時点での露出と光量確保が画質の8割を決めます。**

そのため、望遠カメラ使用時のRAW運用では、ISOを極力上げない、明るい環境で使う、シャドウ耐性を期待しすぎないといった割り切りが重要になります。競合機が望遠にも大型センサーを投入し始めている現状を踏まえると、S25 Ultraの望遠は「JPEGやAI処理前提では優秀だが、RAW編集では余白が少ない」性格だと言えるでしょう。

据え置き仕様は完成度の裏返しでもありますが、RAW編集を深く楽しみたいユーザーにとっては進化の余地が最も大きい部分でもあります。望遠でのRAW現像に限界を感じたとき、それは編集スキルではなく、ハードウェアが発する正直なサインなのです。

3種類のRAWフォーマットの違いと使い分け

Galaxy S25 UltraでRAW撮影を行う際に理解しておくべき最重要ポイントが、実はRAWが1種類ではなく、性格の異なる3種類に分かれている点です。RAWという言葉から一般的に想像される「未加工の生データ」とは異なり、本機では撮影アプリやAPIの違いによって、生成プロセスそのものが大きく変わります。**どのRAWを選ぶかで、現像耐性や仕上がりの方向性は決定的に変わる**ため、使い分けは必須です。

まず基本となるのが、標準カメラアプリのProモードで撮影できるRAWです。これはシングルフレーム、もしくは極めて少数フレームを元にしたリニアDNGで、センサーの特性が最もストレートに反映されます。その分、ISOCELL HP2の0.6µmピクセルが抱える物理的制約も隠されず、暗部では輝度ノイズとクロマノイズが顕著に現れます。SamsungコミュニティやDarktable開発者フォーラムの分析によれば、DNG内部でJPEG XL系の圧縮が行われている形跡もあり、環境によっては互換性の問題が生じる点も注意が必要です。

次に、多くのユーザーが高画質だと感じる理由になっているのがExpert RAWです。これはGalaxy Storeから追加する専用アプリで、シャッターを切った瞬間に最大16枚前後の異なる露出を合成し、16bitコンテナのDNGとして出力します。Samsung公式の解説やAdobeの検証でも示されている通り、ハイライトの白飛び耐性とシャドウのS/N比は飛躍的に改善します。一方で、**ノイズリダクションやシャープネスがRAW生成段階で既に適用されている**ため、葉や髪の毛などの微細構造がAI的に単純化されるケースがあり、後処理で元に戻すことはできません。

RAWの種類 生成方式 主な特徴
ProモードRAW シングルフレーム センサー特性が露骨、ノイズ多め
Expert RAW マルチフレームHDR 高DR・低ノイズ、処理済みRAW
サードパーティRAW Raw Bayer直取得 完全未加工、補正は全手動

そして最も尖った存在が、MotionCamなどCamera2 APIを直接制御するサードパーティ製アプリによるRAWです。これはSamsungのISPやProVisual Engineをほぼ完全にバイパスし、Raw Bayer Dataをそのまま記録します。過度なシャープネスや塗り絵的な質感とは無縁で、粒状感のある自然な描写が得られますが、歪曲収差や周辺減光、色収差も一切補正されません。Adobe Camera Rawのような自動レンズ補正に頼れない場合、現像には相応の知識と手間が求められます。

用途別に考えると、失敗を避けて高い成功率を求めるならExpert RAW、動体や照明条件がシンプルな場面で素材重視ならProモードRAW、そして最大限の自由度と引き換えに作業量を厭わないならサードパーティRAWが適しています。**Galaxy S25 UltraのRAWは優劣ではなく役割分担で選ぶもの**であり、この理解こそが現像耐性を最大限に引き出す近道です。

ダイナミックレンジとノイズ耐性の実測的な考察

Galaxy S25 UltraのRAW現像耐性を語る上で、ダイナミックレンジとノイズ耐性の実測的な理解は避けて通れません。特にRAWは「どこまで持ち上げられるか」「どこから破綻するか」が如実に表れるため、スペック以上に撮影後の編集挙動が重要になります。

まずダイナミックレンジについてです。Photons to Photosの公開データによれば、写真用センサーのダイナミックレンジはセンサー面積と強い相関を持つことが知られています。この観点で見ると、1/1.3インチのISOCELL HP2はスマートフォンとしては大型ですが、物理的には限界が明確です。実測値や過去モデルとの比較から、**低ISO時で約10〜11EV前後**が実効的な上限と考えられます。

機材カテゴリ センサーサイズ 実効DR目安
Galaxy S25 Ultra 1/1.3インチ 約10〜11EV
1インチスマートフォン 1インチ 約12EV前後
フルサイズ一眼 35mm 14EV以上

この差はRAW現像時に明確に体感できます。S25 Ultraではハイライト側の復元耐性が低く、完全にクリップした白はLightroomやCamera Rawでも情報を取り戻せません。DXOMARKの再テストでも、高輝度部がやや飛びやすい傾向が指摘されており、**露出段階でハイライトを守る意識が不可欠**です。

一方、ノイズ耐性は撮影モードによって評価が大きく分かれます。ProモードのシングルフレームRAWでは、0.6µmピクセルの物理的制約が露骨に現れ、シャドウを+2〜3EV以上持ち上げると輝度ノイズだけでなくクロマノイズが急増します。特に暗部にマゼンタやグリーンの色被りが発生しやすく、これはSamsung製ISOCELLセンサー特有の黒レベルばらつきが原因とされています。

これに対しExpert RAWは挙動がまったく異なります。最大16枚前後のマルチフレーム合成によりランダムノイズが平均化され、**同条件でもシャドウのS/N比が数段分改善**されます。Adobeによる16bit Linear DNG対応も相まって、トーンカーブを大きく動かしても階調割れが起きにくい点は実測的にも明確です。

Expert RAWではノイズ低減がDNG生成段階で適用されているため、ノイズ耐性は高い一方で微細テクスチャが簡略化されるリスクがあります。

実写検証では、夜景や室内低照度シーンでExpert RAWは明らかに有利ですが、木の葉や芝生など高周波ディテールではAI処理による“均質化”が確認されています。GSMArenaや複数のユーザー検証でも、100%表示時に塗り絵的な描写になるケースが報告されており、**ノイズ耐性と解像感はトレードオフの関係**にあることが分かります。

総合すると、Galaxy S25 Ultraのダイナミックレンジとノイズ耐性は、純粋なセンサー性能だけで見れば突出してはいません。しかし、Expert RAWという計算写真学的アプローチにより、実用上の編集耐性は大きく底上げされています。重要なのは、ハイライトを飛ばさない露出設計と、用途に応じたRAWモードの使い分けです。これを理解した上で扱えば、本機はモバイルRAWとして非常に扱いやすい特性を持っていると言えるでしょう。

Expert RAWは本当にRAWなのかという論点

Expert RAWは名前から「完全なRAW」を想起させますが、結論から言えば光学的に純粋なRAWではありません。ただし、それは欠点というより、現代のモバイル撮影に最適化された意図的な設計思想だと理解する必要があります。

Samsung自身も公式サポートで示している通り、Expert RAWはシャッターを切った瞬間に複数枚の画像を取得し、HDR合成やノイズ低減を行ったうえでDNGを書き出します。最大16枚前後の異なる露出を合成することで、ハイライトの白飛びとシャドウノイズを同時に抑えています。これはAdobeが定義する「計算写真を含むRAW」の範疇にあり、AppleのProRAWとも思想は近いです。

項目 Expert RAW 伝統的なRAW
フレーム構成 マルチフレーム合成 単一フレーム
ノイズ処理 生成段階で適用 基本的に未処理
階調情報 16bit DNG(実効拡張) センサーbit深度依存

特に議論を呼ぶのが、ノイズリダクションやシャープネスが「焼き込み済み」である点です。Expert RAWのDNGをLightroomで100%表示すると、遠景の葉や細かなテクスチャが均質化され、「塗り絵的」に見えるケースがあります。これはRedditやDarktable開発者コミュニティでも指摘されており、一度AIが単純化したディテールは、現像工程で復元できません。

一方で、Photons to Photosが示すようにスマートフォンサイズのセンサーは物理的にダイナミックレンジが狭く、単一フレームRAWではシャドウ耐性が極端に弱くなります。Expert RAWはこの弱点をマルチフレーム合成で補い、結果として現像耐性の高い素材を安定して得られるという大きな利点があります。

DXOMARKの再テストでも、Expert RAW使用時は暗部S/N比が明確に改善し、+2〜3EVのシャドウリカバリーでも色破綻が起きにくいと評価されています。これはProモードRAWでは再現できない挙動で、夜景や逆光風景では実用上の差として現れます。

つまりExpert RAWは、「センサーが捉えた生データ」ではなく、AIが介入したうえで編集余地を最大化したRAWライクな中間素材です。純粋主義者が求めるTrue RAWとは異なりますが、失敗確率を極小化しつつ高い完成度を得たいユーザーにとっては、極めて合理的な選択肢だと言えるでしょう。

Expert RAWは本当にRAWなのかという問いへの答えは、「伝統的定義では否、実用的定義では是」です。この割り切りを理解できるかどうかが、S25 Ultraを写真ツールとして評価する分岐点になります。

Lightroom連携とHDR編集がもたらすワークフローの変化

Galaxy S25 UltraにおけるLightroom連携とHDR編集対応は、RAW現像の考え方そのものを変える転換点になります。これまでモバイル写真の編集は、撮影後にPCで仕上げる前提でしたが、**撮影・確認・現像・書き出しまでをスマートフォン単体で完結できる現実的な環境**が整いました。

Adobeによれば、Lightroom MobileはGalaxy S25シリーズに対してHDR編集を正式サポートし、AndroidのUltra HDR規格をフルに活用できます。S25 Ultraの高輝度ディスプレイ上で、ハイライトを100%以上の輝度情報として扱いながら編集できる点は、従来のSDRベースのワークフローとは決定的に異なります。

特にExpert RAWで撮影した16bit Linear DNGは、HDR編集との相性が非常に良好です。マルチフレームHDR合成によって保持されたハイライト情報が、Lightroom上で「白」ではなく「発光する光」として再解釈され、夕景の太陽や夜景のネオンが立体感を伴って蘇ります。

項目 従来のSDR現像 HDR編集対応ワークフロー
ハイライト表現 白飛び回避が最優先 輝度情報として積極活用
編集環境 ヒストグラム中心 実際の輝度を見ながら調整
最終出力 JPEG中心 HDR対応AVIF/JPEG XL

この変化により、編集時の判断基準も変わります。従来は「白飛びしていないか」を数値で確認していましたが、HDR編集では**目で見た印象を優先し、必要に応じてハイライトをあえて強調する**という選択が可能になります。これは一眼カメラのRAW現像でも長らく実現できなかった、表示デバイスと編集データの完全な一致に近い体験です。

さらに、Adobe Camera RawにはS25 Ultra専用のレンズプロファイルが統合されており、歪曲収差や周辺減光の補正が自動適用されます。これにより、現像の初期段階で行っていた補正作業がほぼ不要となり、**色と光の表現に集中できる時間が大幅に増加**します。

一方で注意点もあります。HDR編集の成果を活かすには、閲覧環境もHDR対応である必要があります。SDR環境ではトーンが圧縮され、意図した表現が伝わらない可能性があります。そのため、用途に応じてSDR書き出しとHDR書き出しを使い分ける判断力が求められます。

Lightroom連携とHDR編集は、Galaxy S25 Ultraを単なる高性能カメラ付きスマートフォンから、**完結型のモバイル現像スタジオ**へと進化させました。この変化は作業時間の短縮にとどまらず、撮影者の表現意欲そのものを刺激するワークフロー革新と言えます。

iPhoneやPixelとのRAW現像耐性比較

Galaxy S25 UltraのRAW現像耐性を語る上で避けて通れないのが、iPhoneやPixelとの思想の違いです。同じ「RAW」を名乗っていても、その中身はまったく別物であり、現像時の粘りや許容範囲に明確な差が現れます。

結論から言えば、iPhoneは素直さ、Pixelは耐性、Galaxyは選択肢の多さが最大の特徴です。どれが優れているかではなく、どのタイプの現像を求めるかで評価が分かれます。

機種 RAWの性格 現像時の特徴
iPhone Pro(ProRAW) 12bit リニアRAW 色と階調が素直、破綻しにくい
Pixel Pro 計算写真ベースRAW シャドウ耐性が高くノイズが残る
Galaxy S25 Ultra 複数RAW方式 設定次第で性格が大きく変わる

まずiPhoneのProRAWは、AdobeやDXOMARKの評価でも一貫して「扱いやすいRAW」とされています。12bitリニアDNGとして出力され、ホワイトバランスのズレが少なく、露出補正やトーンカーブを大きく動かしても色が破綻しにくいのが特徴です。ハイライト側の粘りは物理的なセンサーサイズなりですが、白飛び直前の階調が滑らかで、現像時に安心感があります。

Pixelは方向性が異なり、Googleの計算写真アルゴリズムを前提としたRAWです。露出は意図的に抑えられ、シャドウを後から持ち上げる設計になっているため、暗部耐性が非常に高いです。Photons to Photosのデータ傾向とも一致し、シャドウを2〜3EV持ち上げても色情報が崩れにくい点はPixelの強みです。一方でノイズをあえて残すため、クリーンさを求める人には荒く感じられることもあります。

Galaxy S25 Ultraはこの2機種と根本的に異なり、RAWの時点でユーザーに選択を迫ります。ProモードRAWではセンサーの物理的限界が露呈し、シャドウを大きく持ち上げるとマゼンタ被りやカラーノイズが顕著になります。これはSamsung製ISOCELLセンサーの特性として、海外フォーラムや技術検証でも繰り返し指摘されています。

一方でExpert RAWを使えば話は変わります。最大16枚前後のマルチフレーム合成により、ハイライトとシャドウの両方に余裕が生まれ、数値上はiPhoneやPixelを超える現像耐性を感じる場面もあります。ただし、この耐性はAI処理と引き換えであり、細部のテクスチャが簡略化されるケースも少なくありません。

総合すると、iPhoneは「RAW現像の失敗が少ない安心設計」、Pixelは「暗部を攻めるための耐久力」、Galaxy S25 Ultraは「現像耐性を自分で選び取る上級者向け構造」と言えます。Lightroomで大胆に追い込む作業を前提にするなら、Galaxyは最も伸びしろが大きい反面、設定を誤ると最も破綻しやすい存在でもあります。

写真好きにとってGalaxy S25 Ultraは買いか

写真好きにとってGalaxy S25 Ultraが「買い」かどうかは、何を重視するかで評価がはっきり分かれます。結論から言えば、撮ってすぐ高い完成度を得たい人には非常に魅力的で、RAW素材を徹底的に作り込みたい純粋主義者には慎重判断が必要なカメラです。

まず評価すべきは、Expert RAWを中心としたコンピュテーショナル・フォトグラフィーの完成度です。Samsung公式やAdobeの技術資料によれば、S25 UltraのExpert RAWは最大16枚前後のマルチフレーム合成を行い、シャドウノイズを統計的に低減しつつハイライト情報を保持します。これにより、手持ち撮影でも一眼に近いダイナミックレンジの画像を安定して得られます。

特に風景や夜景ではこの恩恵が大きく、DXOMARKの評価でも低照度時の露出安定性とHDR制御は高水準とされています。現像耐性という観点では「完全な生データ」ではないものの、Lightroomでのトーン調整時に破綻しにくい実用的なRAWである点が強みです。

評価軸 写真好き視点での実態 向いている人
ダイナミックレンジ Expert RAWで実効的に広いが物理限界あり 風景・夜景中心
RAWの自由度 AI処理が一部焼き込み済み 効率重視派
解像感 超広角50MPは高評価 広角構図好き

一方で注意点も明確です。メインセンサーは1/1.3インチ・0.6µm画素と物理的余裕が小さく、ProモードのRAWではシャドウ持ち上げ時にカラーノイズやマゼンタ被りが出やすい傾向があります。Photons to Photosが示すセンサー面積とダイナミックレンジの相関から見ても、1インチセンサー機やミラーレスとの差は埋まりません。

また、Expert RAWはノイズ低減やシャープネスが生成段階で適用されるため、後処理でディテールを“戻す”ことはできません。この点は海外の写真家コミュニティでも「素材としての純度は高くない」と指摘されています。

Galaxy S25 Ultraは、RAWを一から作り込むカメラというより、失敗を減らし高確率で良作を得るための撮影ツールです。

総合すると、スマートフォン一台で撮影から現像まで完結させたい写真好きには買いです。一方で、センサーの素性を最大限引き出し、ノイズや階調を完全に自分で支配したい人にとっては、専用カメラや1インチセンサー搭載スマホの方が満足度は高いでしょう。

Galaxy S25 Ultraは「最高の素材」ではありませんが、写真を楽しむ体験全体を最適化した、極めて完成度の高い道具であることは間違いありません。

参考文献