大画面をポケットに収められる折りたたみスマートフォンは、登場以来多くのガジェット好きの心を掴んできました。しかし一方で、「高いのに壊れやすそう」「ヒンジや画面が不安」と感じ、購入をためらっている方も多いのではないでしょうか。

実際、2025年から2026年にかけて折りたたみスマホ市場は成長の踊り場に入り、その背景には耐久性への根強い不安があると指摘されています。画面中央の折り目やヒンジの摩耗、防塵性能の限界、そして日本特有の寒冷環境による破損リスクなど、気になる要素は少なくありません。

本記事では、最新モデルの構造や素材、公式データやユーザー事例をもとに、折りたたみスマホが抱える耐久性の課題を多角的に整理します。さらに修理費用やリセールバリューといった経済的な側面にも踏み込み、今このジャンルを選ぶべきかどうかを判断するための視点を提供します。読み終えたとき、自分にとって折りたたみスマホが「買い」なのかが、きっと明確になるはずです。

折りたたみスマートフォン市場が直面する成長停滞の理由

折りたたみスマートフォン市場が成長停滞に直面している最大の理由は、技術的な限界そのものよりも、消費者が抱く「長期的に安心して使えるのか」という信頼性への疑念にあります。Counterpoint ResearchやDSCCの分析によれば、2024年以降、折りたたみディスプレイの出荷予測は相次いで下方修正され、市場はアーリーアダプター層から一般消費者層への拡大に失敗しつつあります。

特に日本市場ではこの傾向が顕著です。20万円から30万円に達する高価格帯にもかかわらず、画面中央の折り目劣化やヒンジの異物侵入といった初期モデル由来のトラブル事例が、SNSやレビューを通じて長く記憶されています。Samsung Electronicsが世代を重ねて改良を進めているにもかかわらず、「改善された」ことと「完全に解消された」ことの間にある溝が、購入判断を鈍らせています。

この不安は物理的な壊れやすさだけにとどまりません。SellCellの調査が示すように、折りたたみスマートフォンは発売から半年で価値の約6割を失うケースもあり、一般的なフラッグシップ機より減価償却が速いとされています。つまり消費者は、故障リスクに加えて資産価値が急速に目減りする経済的リスクも同時に背負うことになります。

要因 折りたたみスマホ 通常のフラッグシップ
購入価格帯 20〜30万円 15〜20万円
6か月後の価値下落 約60% 30〜40%
主要な不安要素 耐久性・修理費 バッテリー劣化

さらに成長を鈍化させているのが、耐久性を巡る情報の非対称性です。IP48といった新しい防塵・防水表記は技術的前進である一方、IECの定義を理解していない消費者に過度な期待を抱かせ、後の失望につながりやすい側面があります。権威あるIEC規格の解説によれば、防塵等級4は1mm以上の固形物のみを防ぐ水準であり、日常的な砂や埃を完全に防ぐものではありません。

結果として市場では、「壊れやすそう」「修理が高そう」「売るときに値が付かなそう」という三重の心理的ハードルが形成されています。これは技術革新のスピードが消費者の安心感の醸成を上回ってしまった典型例といえます。折りたたみという新しい体験価値自体は高く評価されながらも、信頼性と経済合理性が追いつかない限り、成長は一時的な踊り場から抜け出しにくい状況が続いています。

なぜ耐久性への不安は消えないのか

なぜ耐久性への不安は消えないのか のイメージ

折りたたみスマートフォンの耐久性に対する不安がなかなか払拭されない最大の理由は、単なるイメージや過去の失敗談ではなく、構造的・物理的な制約が今も存在している点にあります。メーカー各社は世代ごとに改良を重ねていますが、「壊れにくくなった」と「壊れない」は本質的に異なります。その差を消費者は直感的に理解しており、そこに心理的な壁が生まれています。

まず象徴的なのが、曲がるディスプレイを成立させている超薄型ガラス(UTG)の存在です。Schott社などが供給するUTGは、厚さ30〜50マイクロメートルと人間の髪の毛よりも薄く、ガラスでありながら折り曲げ可能という革新的な素材です。しかしこれは同時に、突き刺しや局所的な圧力に極端に弱いことも意味します。Samsung Displayの技術資料でも、UTGは「硬度と柔軟性のトレードオフ」の上に成り立つ素材であるとされています。

このガラス単体では製品として成立しないため、実際の画面はUTG、ポリマー保護層、接着剤、OLEDパネルといった複数の層で構成されています。問題は、この積層構造が経年劣化や環境変化に弱い点です。ユーザーコミュニティで繰り返し報告されている、画面中央から保護フィルムが浮き上がる現象は、接着層の劣化が原因と考えられています。これは初期モデル特有の問題ではなく、最新世代でも完全には解消されていません。

要素 改良の進展 残る不安要素
UTG 薄型化・折り目低減 点荷重への弱さ
ヒンジ 開閉回数の耐久向上 落下・異物侵入
積層構造 軽量化・薄型化 接着剤の劣化

さらに消費者の不安を増幅させているのが、防塵・防水性能に対する認識のギャップです。たとえばGalaxy Z Fold 6で採用されたIP48等級は、一見すると「防塵対応」に見えますが、IECの定義では直径1mm以上の固形物を防ぐに過ぎません。日常的なホコリや砂は規格上、防げないことを意味します。Counterpoint Researchが指摘するように、この種のスペック表記と実使用環境の乖離は、信頼性評価を難しくしています。

そして決定的なのが、耐久性の問題が「壊れるかどうか」ではなく、「壊れたときにいくら失うか」という経済的不安に直結している点です。SellCellの分析では、折りたたみスマートフォンは発売から半年で価値の約60%を失うとされています。高額な修理費用と低いリセールバリューが組み合わさることで、ユーザーは常に「この一台は消耗品かもしれない」という前提で使わざるを得ません。

技術は確実に前進していますが、物理法則とコスト構造はまだ追いついていません。このズレこそが、世代を重ねてもなお、耐久性への不安が消えない根本原因なのです。

超薄型ガラス(UTG)の進化と構造的な限界

折りたたみスマートフォンの耐久性を語るうえで、超薄型ガラス(UTG)は避けて通れない中核技術です。現在主流となっているUTGは、厚さ約30〜50マイクロメートルとされ、人間の髪の毛よりも薄いレベルまで加工されています。Samsung DisplayやSchott社といった大手サプライヤーによれば、この薄さによってガラスでありながら曲げ耐性を獲得することに成功しています。

一方で、**UTGは「柔らかくなったガラス」ではなく「極端に薄いガラス」に過ぎない**という点が重要です。材料工学の観点では、厚みを減らすほど曲げやすくなる反面、点や線で加わる局所的な圧力、いわゆる突き刺し強度は急激に低下します。ディスプレイ中央の折り目部分は、構造的に常に応力が集中するため、UTGの物性限界が最も露呈しやすい領域です。

UTG単体で使われることはなく、実際のディスプレイは複数層の積層構造になっています。ユーザーが触れている表面はポリマー製の保護層であり、その下にUTG、OLEDパネル、接着層が重なっています。このうち、**層と層をつなぐ接着材の劣化が、耐久性問題の引き金になるケースが多い**と指摘されています。実際、Galaxy Z Foldシリーズでは、使用開始から1年前後で折り目に沿って保護層が浮き上がる現象が複数世代にわたり報告されています。

UTGの進化は「割れないガラス」ではなく、「壊れ方を遅らせるガラス」を目指した改良の積み重ねです。

Schott社の技術ロードマップでは、量産レベルで20マイクロメートル級UTGの実用化が視野に入っているとされています。理論上はさらに折り目が目立ちにくくなり、開閉時の応力も低減できますが、その代償として外部衝撃への耐性は一段とシビアになります。特に、ポケット内で鍵や硬貨が一点接触した場合、プラスチック主体の従来ディスプレイよりも破損リスクは高いままです。

項目 一般的な強化ガラス UTG
厚さ 約400〜500μm 約30〜50μm
曲げ耐性 ほぼ不可 限定的に可能
突き刺し強度 高い 低い

さらに、スタイラス入力対応という要素もUTGの限界を浮き彫りにしています。Samsungが専用S Pen以外の使用を強く制限しているのは、**UTGが面での圧力には比較的強い一方、点荷重に極端に弱い**ためです。これは素材の欠陥ではなく、薄さと可撓性を両立させた結果として避けられない特性です。

ディスプレイ関連の学術研究や業界分析によれば、UTGの今後の進化は厚み削減よりも、応力を分散させる積層設計や接着材の改良に軸足が移りつつあります。ガラスそのものだけで限界を突破するのではなく、周辺材料との協調設計によって寿命を延ばすという考え方です。**UTGは完成された素材ではなく、依然として妥協と進化の途上にある技術**であることを理解する必要があります。

ヒンジ機構の設計思想とメーカーごとの違い

ヒンジ機構の設計思想とメーカーごとの違い のイメージ

折りたたみスマートフォンの耐久性を語るうえで、ヒンジ機構は単なる可動部ではなく、設計思想そのものを映す中核パーツです。各メーカーは「薄さ」「開閉の滑らかさ」「衝撃耐性」という相反する要素の最適解を求め、まったく異なるアプローチを採用しています。

まず押さえておきたいのは、ヒンジ設計の本質が応力をいかに分散させるかにある点です。UTGやOLEDは繰り返しの曲げに弱く、折り目付近に力が集中すると破損リスクが高まります。そのため近年は、従来の歯車を多用した構造から、部品点数を減らし摩擦制御で角度を保持する「ギアレス設計」へと進化しています。

メーカー ヒンジの特徴 設計思想
Samsung フレックスヒンジ、摩擦保持 安定性と実用性重視
Honor 超薄型Super Steel Hinge 極限の薄さと軽量化
Google 180度フルフラット対応 使用体験の自然さ優先

Samsungは長年の量産経験を背景に、保守的ながら実績重視の設計を続けています。Bureau Veritasによる20万回以上の開閉テスト認証は、日常使用での信頼性を数値として示すものです。一方で、ヒンジ自体が比較的厚く、薄型化では競合に後れを取っています。これは落下時のエネルギー吸収を優先した結果とも言えます。

対照的なのがHonorです。Magic V3ではチタン合金や高強度鋼材を用い、SGS認証で50万回開閉をクリアしつつ、本体厚み9.2mmという驚異的な数値を実現しました。部品点数削減による故障確率低減という思想は合理的ですが、薄さゆえに放熱や衝撃余裕が小さい点はトレードオフです。

GoogleはPixel 9 Pro Foldで「完全に平らに開く」体験を重視しました。CNETや専門レビュアーによれば、この自然な開閉角は評価される一方、剛性感に不安を感じる声もあります。これはユーザー体験を優先した結果としての構造的余白の少なさを示しています。

総じてヒンジは、数字で示される開閉回数だけでは測れません。薄さを取るのか、衝撃耐性を取るのか、操作感を取るのか。その選択がメーカーごとの思想であり、ユーザーは自分の使い方に最も近い設計を見極める必要があります。

IP等級の誤解と防塵性能の現実

折りたたみスマートフォンの耐久性を語るうえで、IP等級への誤解は非常に根深い問題です。特に2024年以降に登場した「IP48対応」という表記は、防塵性能が大きく向上したかのような印象を与えますが、**実態を正確に理解していないと過度な安心感につながります**。

IECが定めるIPコードでは、最初の数字が防塵性能を示します。「4」は直径1.0mm以上の固形物が侵入しないことを意味し、粉塵レベルの微粒子は想定外です。IEC公式資料や工業規格の解説によれば、この等級は工具や太めのワイヤーを防ぐレベルであり、一般的に想像される“ホコリに強い”状態とは一致しません。

粒子の種類 一般的な粒径 IP48での防御可否
粗い砂 0.5〜2.0mm 一部侵入の可能性あり
海岸の細砂 0.1〜0.25mm 侵入を防げない
ハウスダスト 0.01〜0.1mm ほぼ無防備

この数値を見れば明らかなように、**日常生活で最も遭遇しやすい砂やホコリはIP48の保護対象外**です。ポケットの中の繊維くずやバッグ内部の微細な塵は、ヒンジの隙間から容易に侵入します。実際、海外ユーザーコミュニティでは、砂粒が噛み込んだことで開閉時に異音が発生し、その後ディスプレイ破損に至った報告が複数確認されています。

IP等級は「安全宣言」ではなく、あくまで試験条件下での耐性指標に過ぎません。特に折りたたみ構造では、可動部の存在が数値以上のリスクを生みます。

他社製品に目を向けると、GoogleやHonor、Motorolaの多くは依然としてIPX8に留まっています。これは防水試験のみを実施し、防塵については保証していないことを意味します。Googleの公式安全ガイドでも、埃の多い環境での使用を避けるよう明記されており、メーカー自身が防塵性能の限界を認めている点は重要です。

水没よりも、実は砂塵の方がリスクが高いという指摘は、ディスプレイ業界の専門家や修理事業者の間でも共有されています。水は乾燥や洗浄で回復する余地がありますが、**微粒子は内部で摩耗や局所的な圧力集中を引き起こし、不可逆的な損傷につながりやすい**ためです。

つまり、IP48という表記は進歩ではあるものの、「砂やホコリに強くなった折りたたみスマホ」と解釈するのは危険です。数値の意味を正しく理解し、砂浜や粉塵環境での使用を避けるといった行動レベルの対策を取らなければ、IP等級は期待通りの安心を提供してくれません。

日本の気候が引き起こす低温時の破損リスク

日本の気候が折りたたみスマートフォンにもたらす最大の脅威は、夏の高温多湿よりも、実は冬季の低温環境です。北海道や東北、北陸はもちろん、関東や関西でも真冬の朝晩に氷点下を記録することは珍しくありません。この「日常的な寒さ」が、折りたたみ構造に特有の破損リスクを静かに高めています。

折りたたみスマートフォンの内部は、超薄型ガラス、ポリマー保護層、接着剤、OLED基板といった異なる素材の積層体で構成されています。材料工学の観点では、**低温になるほど素材は硬化し、しなやかさを失います**。特に接着剤は弾性を急激に失い、折り曲げ時の応力を逃がせなくなります。その結果、開閉の瞬間に力が一点へ集中し、画面中央で破断が起きやすくなります。

温度帯 素材の状態 想定されるリスク
20℃前後 弾性が保たれる 通常使用で問題が起きにくい
0℃付近 接着層が硬化 折り目部分に応力集中
-5℃以下 脆性が顕著 開閉時の画面破断・剥離

実際、北米や日本の寒冷地ユーザーからは、屋外で端末を開いた瞬間に異音がし、その直後に表示不良が発生したという報告が複数寄せられています。Googleの安全ガイドやSamsungの公式サポート情報によれば、多くの折りたたみ端末の**動作保証温度は0℃以上**とされており、氷点下での開閉は設計想定外です。

ここで問題になるのが、日本の生活環境とのギャップです。通勤時の屋外待機、スキー場での使用、暖房の切れた室内など、0℃以下でスマートフォンを操作する場面は避けられません。さらに寒冷環境から暖かい室内へ移動した際の急激な温度変化は、内部結露を引き起こし、基板やコネクタの劣化リスクも高めます。

**低温下での破損は、落下や衝撃がなくても起こり得る点が最大の落とし穴です**。外見上の損傷がないため、メーカー保証では「極端な温度条件での使用」と判断され、無償修理の対象外になる可能性も指摘されています。日本の冬は、折りたたみスマートフォンにとって静かで確実なストレステストであり、耐久性不安を現実のリスクへと変えているのです。

主要折りたたみスマホ別に見る耐久性評価

主要な折りたたみスマートフォンは、同じ「折りたたみ」というカテゴリに属しながらも、耐久性に対する設計思想とリスクプロファイルが大きく異なります。ここでは日本市場で現実的に検討対象となる代表機種を軸に、構造・実績・不安要素のバランスから耐久性を評価します。

評価において重視すべきなのは、メーカーが公表する開閉回数テストだけではありません。**日本の気候、ユーザーの使用頻度、そして故障時の影響範囲まで含めた「実使用耐久性」**が重要になります。

機種 耐久性の強み 主な懸念点
Galaxy Z Fold 6 / Flip 6 開閉耐久実績が豊富、IP48対応 保護フィルム剥離が継続的課題
Pixel 9 Pro Fold 外装ガラスの耐傷性が高い 防塵非対応、初期不具合報告
Honor Magic V3 50万回開閉テスト、超薄型設計 放熱と国内サポートの弱さ
Motorola Razr 50 Ultra 開閉回数を減らせる外部画面 過去モデルの信頼性イメージ

SamsungのGalaxy Z Fold 6およびFlip 6は、Bureau Veritas認証による20万回以上の開閉テストをクリアしており、**統計的な使用実績という点では最も信頼性が高い存在**です。Counterpoint Researchが指摘するように、初期世代で問題視されたヒンジ破損は大幅に減少しました。ただし、画面中央の保護フィルム剥離は世代を超えて報告が続いており、長期使用では無視できないリスクです。

Google Pixel 9 Pro Foldは前モデルの欠点を修正し、完全にフラットに開く構造を実現しました。一方で、Google公式フォーラムでは外側ディスプレイの無反応や突然の表示不良といった報告が散見されます。**IPX8に留まり防塵性能を保証していない点**は、日本の生活環境を考えると耐久性評価を一段階下げる要因になります。

Honor Magic V3はSGS認証による50万回の開閉耐久を前面に押し出し、材料工学的には非常に野心的です。Schott社のUTG進化とも歩調を合わせ、折り目の応力分散は高水準と評価されています。しかし、極端な薄型化は放熱余力を削りやすく、CNETのハンズオンでも長時間高負荷時の温度上昇が指摘されています。**日本国内での修理・保証体制の弱さ**は、耐久性を実用面で相殺してしまいます。

Motorola Razr 50 Ultraは少し異なる角度から評価できます。大型外部ディスプレイにより、日常操作の多くを閉じたままで完結できるため、結果としてヒンジとUTGへの負荷を減らせます。これはAmateur Photographerのレビューでも触れられており、理論上は寿命延長に寄与します。ただし、過去世代での耐久トラブルの印象が残っており、ブランド全体の信頼回復は途上です。

耐久性評価で最も安定しているのはGalaxy Zシリーズ、構造的完成度はHonor、運用次第で寿命を伸ばせるのがRazr、不確実性が残るのがPixelという位置づけになります。

結局のところ、折りたたみスマホの耐久性は「壊れにくさ」だけでなく、「壊れたときにどうなるか」まで含めて判断すべきです。公開テストや第三者認証と、実ユーザーの報告を突き合わせることで、各モデルの立ち位置がより立体的に見えてきます。

修理費用と補償サービスが示す経済的リスク

折りたたみスマートフォンにおける最大の心理的ハードルは、壊れやすさそのものよりも、故障時に発生する経済的ダメージの大きさです。高額な本体価格に加え、修理費用と補償制度の構造が、ユーザーに見えないリスクを突き付けています。

まず直視すべきは、メインディスプレイ修理費の現実です。折りたたみ端末の内部画面は、UTG、OLEDパネル、ヒンジ周辺構造が一体化した高価なモジュールで構成されています。そのため、通常のスマートフォンのように「ガラスだけ交換する」という対応ができません。

機種カテゴリ 保証なし修理費用の目安 備考
Galaxy Z Fold系 約8万〜10万円 内部画面交換が中心
Pixel Fold系 10万〜15万円超 本体交換対応となる例も

SureBrightが公開している2025年向け保証ガイドによれば、折りたたみスマホの修理費は「単発事故でも買い替え判断に匹敵する水準」と位置付けられています。これは落下や低温環境での画面破損が、即座に資産価値の大半を失わせることを意味します。

このリスクを大幅に軽減しているのが、日本特有とも言えるキャリア補償サービスの存在です。NTTドコモのsmartあんしん補償では、月額約1,100円で修理時の自己負担上限が3,300円に抑えられます。両画面が同時に破損した場合でも、実費との差は数万円規模に及びます。

ソフトバンクのあんしん保証パックや、auの故障紛失サポートも同様に上限額が設定されており、いずれも「高額修理を定額リスクに変換する仕組み」として極めて有効です。Counterpoint Researchの市場分析でも、日本市場で折りたたみ端末の購入率が一定水準を保っている理由として、この補償文化が挙げられています。

一方で、SIMフリー版や並行輸入品を選ぶ場合、この安全網は存在しません。その場合は、モバイル保険など第三者保険への加入が現実的な選択肢となりますが、年間補償上限や免責条件を理解せずに加入すると、想定外の自己負担が発生する可能性があります。

重要なのは、折りたたみスマートフォンが「補償込みで初めて成立する製品」であるという認識です。本体価格だけを見て判断すると、修理費用という後出しのリスクに直面します。補償サービスの内容まで含めて総所有コストを把握できるかどうかが、このジャンルを安心して使い続けられるかを左右します。

リセールバリューから見る資産価値の実態

折りたたみスマートフォンを資産として見たとき、最大の弱点はリセールバリューの低さにあります。購入時の価格が20万円を超えるモデルが珍しくない一方で、中古市場での評価は想像以上にシビアです。これは感覚的な印象ではなく、複数の調査データによって裏付けられています。

中古スマートフォンの価格動向を継続的に分析しているSellCellのレポートによれば、折りたたみスマートフォンは発売から約6か月で市場価値の約60%を失う傾向があるとされています。同時期のiPhone Proシリーズや一般的なフラッグシップAndroidが30〜40%程度の下落に留まることを考えると、減価償却のスピードはほぼ倍です。

この急激な価値下落の背景には、「見えない劣化」への不信感があります。外装が綺麗でも、ヒンジ内部の摩耗、UTGの金属疲労、折り目部分の応力蓄積は外見から判断できません。中古購入者はそのリスクを価格に織り込むため、必然的に買取相場は低く抑えられます。

端末カテゴリ 発売6か月後の平均残価率 査定時の主な減額要因
折りたたみスマートフォン 約40% ヒンジ摩耗、折り目の浮き、完全展開不可
一般的なフラッグシップ機 約60〜70% 外装傷、バッテリー劣化

実際の買取現場では、評価基準はさらに厳格です。専門業者によれば、ヒンジにわずかな擦れがあるだけで数万円単位の減額が発生し、折り目部分に微細なフィルム浮きが確認されるとジャンク扱いになるケースもあります。これは故障の有無ではなく、「将来故障する確率」が評価されているためです。

加えて、モデルサイクルの短さも資産価値を押し下げています。折りたたみ市場は世代交代の速度が速く、新機種ごとに薄型化や折り目改善が大きく進むため、旧モデルは性能以上に「古い構造」と見なされやすいのです。Counterpoint Researchも、技術進化の速さが中古価格の下落圧力になっていると指摘しています。

つまり折りたたみスマートフォンは、「高価だが資産としては残らない消耗品」に近い性格を持っています。将来の下取りや売却を前提に購入するデバイスではなく、購入時点で価値を使い切る覚悟が必要です。この現実を理解せずに手にすると、物理的な耐久性以上に経済的なダメージの大きさに直面することになります。

三つ折り時代とApple参入がもたらす今後の展望

2025年後半から2026年にかけて、折りたたみスマートフォン市場は「完成度を高めるフェーズ」から「形状そのものを再定義するフェーズ」へと移行しつつあります。その象徴が三つ折りデバイスの登場と、長らく噂されてきたAppleの参入観測です。これらは単なる新製品の話題にとどまらず、市場全体の評価軸を根底から変える可能性を秘めています。

まず三つ折りですが、HuaweiやSamsungが開発・発表を進めるTri-Foldは、展開時に10インチ級の画面を実現し、スマートフォンとタブレットの境界を曖昧にします。**生産性や没入感という点では飛躍的な進化**である一方、ヒンジが2基になることで可動部と応力集中点が増え、耐久性リスクも指数関数的に高まります。SamMobileなどの業界メディアによれば、物理的な落下がなくても表示不良が発生した初期報告があり、現時点では一般消費者向けというより技術ショーケース的な側面が強いと見られています。

観点 従来の二つ折り 三つ折り
展開時画面サイズ 7〜8インチ前後 10インチ以上
ヒンジ数 1 2
耐久性リスク 管理可能 高い
想定ユーザー アーリー層〜一般 富裕層・実験的ユーザー

一方で、業界関係者が真のゲームチェンジャーと見ているのがAppleの動向です。Counterpoint Researchや複数のサプライチェーン分析によれば、Appleは2026年以降に折りたたみ型iPhone、もしくはiPad Foldを投入する可能性があるとされています。Appleは過去を振り返っても、新カテゴリにおいて「最初の一社」になることより、**体験品質と信頼性が自社基準に達した段階で一気に普及させる戦略**を取ってきました。

もしAppleが参入した場合、その影響は単なるシェア争いにとどまりません。Schottなどのガラスメーカーやヒンジ部品サプライヤーに対し、より厳格な耐久基準が求められ、UTGの厚みや接着剤、応力分散設計が一段引き上げられる可能性があります。**Appleの参入は「折りたたみ=壊れやすい」という市場イメージを覆す分水嶺**になり得るのです。

結果として、三つ折りは短期的には象徴的存在に留まり、実用性と信頼性の主戦場は二つ折りの成熟とApple基準への最適化に向かうと考えられます。耐久性への不安が完全に解消されるにはもう一段の技術進化が必要ですが、**Apple参入を見据えた2026年前後は、折りたたみスマホが「ニッチな挑戦」から「選択肢の一つ」へ変わる転換点**になる可能性が高いと言えるでしょう。

参考文献