「5Gにしたらスマホの電池が一気に減るようになった」そんな体験をしたことはありませんか。
高速で快適な通信を実現する5Gですが、その裏側でバッテリー消費が激しくなるという声が長年語られてきました。特にガジェットや最新スマートフォンに関心の高い方ほど、この問題を深刻に感じているのではないでしょうか。
しかし、近年の調査データや実機検証を見ると、5Gとバッテリーの関係は大きく変わりつつあります。通信方式の進化、モデムやSoCの改良、キャリア側のネットワーク改善により、「5G=電池が持たない」という常識は揺らぎ始めています。
本記事では、5G通信でバッテリーが消費される技術的な理由をひも解きながら、日本特有の通信事情や実データに基づく端末比較、そしてユーザー自身が実践できる最適化の考え方までを体系的に整理します。なぜ減るのか、どこまで改善しているのか、どう付き合えばいいのか。その答えを知ることで、5G時代のスマートなガジェット選びと使いこなしが見えてきます。
5G時代にバッテリー問題が注目される理由
5G時代にバッテリー問題が注目される最大の理由は、通信体験の進化と電池技術の進歩スピードに大きなギャップが生じている点にあります。5Gは超高速・低遅延という分かりやすいメリットがある一方で、日常的に使うスマートフォンでは「電池が早く減る」という体感的なデメリットが可視化されやすく、ガジェット好きほど敏感に気付いてしまいます。
背景としてまず挙げられるのが、5G初期に主流だったNSA構成です。NSAでは4Gと5Gの無線回路を同時に維持する必要があり、端末内部ではモデムやRF回路が常に二重稼働します。Samsungの技術ホワイトペーパーでも、NSAは高速化と引き換えに電力効率で不利になる構造だと明言されています。ユーザー側から見ると、特別な操作をしていなくても待受中から電力が消費されるため、不満が蓄積しやすい状況でした。
さらに5Gで使われる周波数帯の特性も、バッテリー問題を目立たせています。Sub-6やミリ波といった高い周波数帯は、障害物に弱く減衰しやすいため、基地局から離れた場所や屋内では端末が送信電力を引き上げて通信を維持しようとします。EricssonやGTIの調査によれば、このセルエッジ環境では端末が高出力状態で動作しやすく、**同じ通信量でも消費電力が増えやすい**ことが確認されています。
| 要因 | ユーザー体感 | 電力への影響 |
|---|---|---|
| NSA構成 | 待受でも減りが早い | 4G/5G同時稼働 |
| 高周波数帯 | 屋内で不安定 | 送信出力が増大 |
| 通信の不安定さ | 使えないのに減る | 再送・探索が頻発 |
加えて、5G時代はディスプレイの高リフレッシュレート化や高性能SoCの普及と重なっています。リチウムイオン電池のエネルギー密度は物理的限界に近づいており、容量が劇的に増えない中で、通信・表示・演算のすべてが電力を要求するようになりました。このため、バッテリーの減りが5Gだけの問題なのか、それとも端末全体の設計によるものなのか、切り分けが難しくなっています。
Ooklaの分析では、5G利用時のバッテリードレインは4Gより平均で数%高いとされています。この差自体は技術進化で縮小していますが、ユーザーは充電頻度という形で毎日向き合うため、小さな差でも大きな問題として認識します。だからこそ5G時代には、通信技術そのものだけでなく、バッテリーという「生活に直結する指標」が強く注目され続けているのです。
NSAとSAの違いが電池持ちに与える影響

5Gの電池持ちを語る上で、NSAとSAの違いは避けて通れません。結論から言えば、NSAは構造的にバッテリー消費が増えやすく、SAは省電力に有利です。その理由は通信の仕組みそのものにあります。
NSAはNon-Standaloneの略で、既存の4G LTE網を土台にしながら5Gを重ねる方式です。制御信号は4G、データ通信は4Gと5Gの両方を使うため、端末は常に二つの無線システムを同時に維持します。Samsungの技術ホワイトペーパーでも、NSAではLTEとNRの同時接続が前提となり、端末側の電力効率にペナルティが発生すると明記されています。
この同時接続は、ユーザー体験上は意識されませんが、内部ではRFフロントエンドや電力増幅器、ベースバンド処理が二重に動作します。結果として、待受中であっても消費電力のベースラインが底上げされ、「何もしていないのに電池が減る」感覚につながりやすいのがNSAの特徴です。
| 項目 | NSA | SA |
|---|---|---|
| 制御信号 | 4G LTE | 5G NR |
| 同時稼働する無線 | 4G+5G | 5Gのみ |
| 端末の電力負荷 | 高い | 低い |
一方のSAはStandalone構成で、制御信号もデータ通信も5G単独で完結します。4Gをアンカーとして維持する必要がないため、端末は不要な無線回路をスリープさせることが可能です。Ericssonの分析によれば、SAではシグナリングが簡素化され、端末は単一のRATのみを監視すればよくなるため、電力効率が大きく改善するとされています。
実測データでも差は確認されています。GTIのデバイス電力消費ホワイトペーパーでは、NSA環境下では高出力送信状態が発生しやすく、SAと比べてバッテリーからの電力要求が約10%前後増加するケースが報告されています。これは、NSAではアップリンクでも4Gと5Gの併用が起きやすいことが一因です。
ユーザー視点で重要なのは、SAは「速いだけの5G」ではなく「賢い5G」だという点です。制御が5Gに一本化されることで、C-DRXなどの省電力機能が本来の性能を発揮しやすくなり、通信が少ない時間帯の無駄な電力消費が減ります。同じ5G表示でも、NSAかSAかで電池持ちは別物と言っても過言ではありません。
ただし現状では、SAのエリアは限定的で、多くのユーザーは依然としてNSA環境で使っています。そのため「5G=電池が減る」という印象が残りやすいのです。今後SAが本格普及すれば、5Gのバッテリー評価は大きく塗り替えられる可能性があります。
高周波数帯とセルエッジが引き起こす電力消費
5G通信においてバッテリー消費を押し上げる代表的な要因が、高周波数帯の利用とセルエッジ問題です。5GではSub-6帯の3.7GHzや4.5GHz、さらに一部では28GHzのミリ波といった、4Gよりも高い周波数が使われています。電波工学の基本原理として、周波数が高くなるほど直進性が強まり、障害物を回り込む力が弱くなります。その結果、屋内やビル陰、基地局から距離のある場所では受信環境が急激に悪化しやすくなります。
このようなエリア境界付近、いわゆるセルエッジに端末が位置すると、通信を維持するために端末は送信出力を引き上げます。アップリンクの送信電力はバッテリー消費と強く相関しており、出力が高まるほど消費電力は直線的ではなく、より急激に増加します。GTIのホワイトペーパーによれば、5G端末が最大送信電力に近い状態で動作するHPUEでは、通常時と比べて電力要求が明確に増大することが確認されています。
特にNSA構成の5Gでは、この問題がさらに深刻になります。セルエッジでは5G単独ではアップリンクが成立しにくく、4Gの送信も併用されるため、RFフロントエンド内の電力増幅器が二重に稼働します。GTIの調査では、NSA環境下のHPUE動作は、SA構成と比較してバッテリー消費が約10%程度増加するケースが報告されています。これは構造的な要因であり、端末側の設定だけで完全に回避することは困難です。
さらにミリ波のような超高周波数帯では、ビームフォーミングが不可欠になります。端末は複数のアンテナ素子を用いて、最適な電波の方向を常時探索・追従します。Ericssonの研究でも、セル境界付近ではビームの切り替えや再探索が頻発し、そのたびに演算処理とRF制御が走ることで、消費電力が大きくなると指摘されています。
| 周波数帯 | 電波の特性 | バッテリーへの影響 |
|---|---|---|
| 4G(1GHz前後) | 回折しやすく広範囲をカバー | 送信出力が安定し消費が比較的低い |
| 5G Sub-6 | 直進性が強く減衰が大きい | セルエッジで送信電力が増加しやすい |
| 5G ミリ波 | 極端に直進的で遮蔽物に弱い | ビーム制御負荷が高く消費電力が大きい |
このように、高周波数帯そのものが悪いわけではありませんが、カバレッジの端や不安定な場所では、端末が見えないところで必死に通信を維持しようとします。結果として、体感速度が上がらない状況でも電力だけが消費されるという、ユーザーにとって最も不満の残る挙動が発生します。高周波数帯とセルエッジの関係を理解することは、5G時代のバッテリー問題を正しく捉える上で欠かせない視点です。
5GモデムとSoC進化による省電力化の実態

5G時代のバッテリー持ちを大きく左右しているのが、5GモデムとSoCの進化です。初期の5Gスマートフォンでは「5G=電池が減る」という印象が強く残りましたが、その評価は近年、大きく変わりつつあります。背景にあるのは、モデムの統合化と半導体プロセスの急速な微細化です。
2019〜2020年頃の5G端末では、5GモデムがSoCとは別チップで実装される構成が一般的でした。この場合、SoCとモデム間で常時データをやり取りする必要があり、そのたびに電力ロスが発生します。SamsungやQualcommの技術資料でも、ディスクリート構成は消費電力面で不利であると明言されています。
現在のフラッグシップSoCでは、5GモデムがSoC内部に統合され、電力効率は構造レベルで改善されています。QualcommのSnapdragon 8 Gen 2やGen 3、MediaTek Dimensity 9200などは、4nmや3nmプロセスで製造され、リーク電流の低減と動作電圧の最適化が進んでいます。
| SoC世代 | モデム構成 | 5G時バッテリードレイン傾向 |
|---|---|---|
| 初期5G世代(2020年前後) | 外付けモデム | 4G比で大幅に増加 |
| 最新世代(2023〜) | SoC統合モデム | 4Gとの差が小幅 |
実測データもこの進化を裏付けています。OoklaのSpeedtest Intelligenceによる分析では、Snapdragon 8 Gen 2搭載端末の5G利用時バッテリードレイン率は31%にとどまり、4G利用時の25%との差はわずか6ポイントでした。前世代のSnapdragon 8 Gen 1では、4G利用時ですら30%を超えていたことを考えると、改善幅は非常に大きいと言えます。
さらに注目すべきは、モデム内部にAI処理が組み込まれた点です。QualcommのSnapdragon X70やX75では、AIが電波状況をリアルタイムで解析し、アンテナのチューニングやビーム制御を最適化します。これにより、無駄に高出力で通信し続ける状態を避け、必要最小限の電力で接続を維持できるようになっています。
このAI制御は、ユーザーが意識しないバックグラウンドで動作し、体感品質を落とさずに省電力化を実現する点が重要です。Qualcommが公開している技術概要によれば、不要な受信待機時間を減らし、スリープ時間を最大化することで、待受時の消費電力を大きく削減できるとされています。
結果として、最新SoCを搭載した端末では「5Gだから電池が持たない」という単純な図式は成り立たなくなっています。むしろ、古いSoCの4G端末よりも、新世代SoCの5G端末の方がトータルのバッテリー効率が良いケースも珍しくありません。5Gの省電力化は、通信方式だけでなく、半導体進化そのものによって現実のものになりつつあります。
C-DRXやWUSなど通信プロトコルの省電力技術
5G通信におけるバッテリー消費は、無線チップの性能だけでなく、通信プロトコルの設計思想によっても大きく左右されます。その中核を担うのが、C-DRXとWUSと呼ばれる省電力技術です。これらは3GPPで標準化された仕組みで、ユーザーが意識しない裏側で端末の消費電力を抑えています。
C-DRXは、通信が接続状態にある場合でも、常に受信回路を動かし続けないための制御です。実際のデータ通信は断続的であることが多く、その合間に受信回路をスリープさせることで、RF回路の稼働時間を削減します。**接続を維持したまま眠る**という発想が、待受時や軽い通信での電池持ちを支えています。
5GではLTEよりも柔軟なDRX周期が設定でき、通信量やアプリの挙動に応じてオン期間とスリープ期間を細かく調整できます。ただしNSA構成では4G側との協調が必要なため、初期のネットワークでは最適化が不十分なケースもありました。Ericssonの技術資料によれば、Release 16以降でこの動的制御が強化され、端末ごとの差が縮小しています。
| 技術 | 主な役割 | 省電力への効果 |
|---|---|---|
| C-DRX | 受信回路の間欠動作 | 接続維持中の待機電力を削減 |
| WUS | 低電力の事前通知 | 不要な起動そのものを回避 |
C-DRXの弱点は、データが来なくてもオン期間ごとにメイン受信回路を起動する必要がある点でした。この非効率を根本から改善したのがWUSです。Release 16で導入されたWUSでは、極めて低消費電力の回路だけで事前信号を監視し、実際にデータがある場合のみ本格的な受信処理に移行します。
Rohde & Schwarzの検証資料では、待受中心の利用シナリオにおいてWUS対応端末は、非対応端末と比べて消費電力が大幅に低下することが示されています。**起きる必要がある時だけ起きる**という考え方は、スマートフォンだけでなく、スマートウォッチやIoT機器の長時間駆動にも直結します。
重要なのは、これらの技術が端末単体では完結しない点です。ネットワーク側がWUSやC-DRXを適切に設定して初めて効果を発揮します。QualcommやEricssonが示すように、最新モデムと最適化された基地局が組み合わさることで、5Gでも待受時の電力消費は4Gと遜色ない水準に近づきつつあります。
日本の通信環境がバッテリーに与える独自要因
日本の通信環境は世界的に見ても特殊であり、その特性がスマートフォンのバッテリー消費に独自の影響を与えています。特に都市構造、周波数運用、キャリアごとのネットワーク設計は、端末側の消費電力を左右する重要な要因です。
まず無視できないのが、都市部における極端なトラフィック集中です。東京や大阪では人口密度が非常に高く、昼夜で人流が大きく変化します。総務省や通信事業者の公開資料でも示されているように、混雑時には基地局側で輻輳が発生しやすく、端末は再送要求や接続維持のための制御信号を繰り返し送受信する状態に陥ります。この「通信していないのに電池が減る」現象は、日本の都市型通信環境ならではです。
また、日本特有の地下鉄網や地下街の存在もバッテリー消費を増やす要因です。地下空間ではセルの切り替えが頻発し、端末は常に周囲の基地局を探索します。Ericssonのネットワークエネルギー研究でも、ハンドオーバー回数の増加は端末側の無線回路稼働時間を押し上げると指摘されています。
| 日本特有の環境要因 | 端末側の挙動 | バッテリーへの影響 |
|---|---|---|
| 都市部の輻輳 | 再送・再接続の増加 | 待受時でも消費増 |
| 地下鉄・地下街 | 頻繁なセル探索 | モデム稼働時間増 |
| 独自周波数帯運用 | 非対応バンド回避動作 | 送信電力上昇 |
周波数帯の問題も日本独自です。NTTドコモが重視するn79帯のように、国内専用に近いバンドが存在することで、海外向けSIMフリー端末では最適な5G接続ができないケースがあります。その結果、端末は微弱な5G電波を掴もうとして送信出力を上げ続ける状態になり、バッテリー効率が大きく低下します。
さらに、日本の通信品質に対するユーザー期待値の高さも影響しています。アプリが一瞬でも読み込まれないとバックグラウンド通信が継続され、CPUとモデムが同時に稼働します。ITmediaなどの専門メディアが指摘するように、通信品質のわずかな不安定さが体感以上に電力消費を増幅させているのです。
このように、日本の通信環境は「つながりやすさ」と引き換えに、端末へ高い負荷をかけやすい構造を持っています。高速規格そのものではなく、環境と運用の組み合わせこそが、日本でバッテリー消費が語られやすい本質的な理由だと言えるでしょう。
実データで見るiPhoneとAndroidの5Gバッテリー性能
5G時代のバッテリー性能を語るうえで、最も説得力を持つのは実機テストや大規模データに基づく数値です。理論上の省電力化が進んでいても、最終的にユーザー体験を左右するのは「実際にどれだけ持つのか」に尽きます。ここではiPhoneとAndroidを、5G通信時の実測データから比較します。
まずiPhoneについてです。Reddit上で共有された大規模なユーザーテストでは、最大輝度かつセルラー通信中心という厳しい条件下で、iPhone 16シリーズは前世代より明確な改善を示しました。特に筐体に余裕のあるモデルが強さを発揮しています。
| 機種 | 5G通信時の連続使用時間 |
|---|---|
| iPhone 16 Plus | 約8時間50分 |
| iPhone 16 Pro Max | 約8時間28分 |
| iPhone 16 Pro | 約6時間5分 |
| iPhone 15(参考) | 約6時間35分 |
この結果から読み取れるのは、**5G時代でもバッテリー容量の物理差がそのまま持続時間に直結する**という点です。AppleはOSとハードウェアの統合最適化で知られていますが、それでも小型モデルでは5Gの負荷を吸収しきれない場面があります。一方、iOS 18以降ではモデム制御やバックグラウンド通信の最適化が進み、同条件でも消費が緩やかになったという報告が複数確認されています。
次にAndroidです。OoklaがSpeedtest Intelligenceの実測データを分析した結果は、SoCごとの電力効率差を明確に示しています。5G通信時のバッテリードレイン率を見ると、世代間の進化が極めて大きいことが分かります。
| SoC | 5G利用時ドレイン率 | 4G利用時ドレイン率 |
|---|---|---|
| Snapdragon 8 Gen 2 | 31% | 25% |
| Dimensity 9200 | 34% | 非公開 |
| Dimensity 9000 | 45% | 非公開 |
Qualcommによれば、Snapdragon 8 Gen 2ではモデムの統合化と製造プロセスの微細化により、5Gと4Gの消費差が6ポイント程度まで縮小しています。**これは「5G=電池が激減する」という従来の常識が、最新世代では当てはまらなくなりつつあることを意味します**。MediaTekもDimensity 9200で大幅な改善を達成しており、Android陣営全体で効率競争が激化しています。
一方、Google Pixelに搭載されるTensor系SoCは、AI処理に強みを持つ反面、5Gモデムの電力効率ではSnapdragonに及ばないという評価が一般的です。実際のユーザーレビューでも、動画再生のような一定負荷では良好でも、5G通信を伴う日常利用では減りが早いと感じるケースが報告されています。ただしPixel 9世代では発熱と消費の改善が見られ、差は確実に縮まっています。
総合すると、**5Gバッテリー性能はOSやメーカーよりも、まずSoC世代で判断するのが最も合理的**です。最新SoCを搭載した端末であれば、5Gを常用しても実用上の不満は大きく減っており、旧世代端末との体感差は想像以上に大きいと言えます。
5Gと4Gの消費電力差はどこまで縮まったのか
5Gは4Gよりもバッテリーを消費する、というイメージは依然として根強いですが、最新の実測データを見ると、その差は確実に縮まっています。特にここ数年の変化は大きく、もはや「体感できるほどの差が常に出る」とは言い切れない段階に入りつつあります。
代表的な指標として知られているのが、OoklaがSpeedtest Intelligenceの大規模データを分析したバッテリードレイン率です。同調査によれば、5G利用時は4G LTE利用時と比べて、SoCや通信条件にもよりますが平均で約6〜11%程度バッテリー消費が増加するとされています。
| SoC世代 | 4G利用時のドレイン率 | 5G利用時のドレイン率 |
|---|---|---|
| Snapdragon 8 Gen 2 | 約25% | 約31% |
| Snapdragon 8 Gen 1 | 約32% | 約40%前後 |
| Dimensity 9200 | 約28%前後 | 約34% |
注目すべきは、最新世代SoCにおける4Gと5Gの差分そのものが縮小している点です。たとえばSnapdragon 8 Gen 2では、その差は約6ポイント程度にまで抑えられており、初期の5G端末で問題視された「5Gにした瞬間、明らかに電池が減る」という挙動は大幅に改善されています。
この背景には、モデム統合と製造プロセスの微細化があります。4nmや3nm世代のSoCでは、5GモデムがSoC内部に統合され、リーク電流の低減や動作電圧の最適化が進みました。Qualcommが公表しているモデム技術資料でも、AIを活用したアンテナ制御や受信スリープ時間の最適化により、5G通信時の無駄な待機電力が削減されていることが示されています。
さらに重要なのは、通信方式そのものの成熟です。初期のNSA環境では4Gと5Gを同時に維持する構造的な無駄がありましたが、SA環境が拡大することで、端末が単一の無線方式に集中できるようになりました。Ericssonの技術レポートでも、SA移行によるシグナリング簡素化が、端末側の電力効率改善に直結すると分析されています。
一方で、差が完全に消えたわけではありません。セルエッジや混雑エリアでは、5Gの方が再送や送信出力増加によって消費電力が跳ね上がるケースもあります。つまり、差が縮まった主役は端末側の進化であり、通信環境が悪化すれば依然として5Gは不利という現実は残っています。
それでも全体として見ると、「5Gは電池を犠牲にして使うもの」という評価は、最新世代のデバイスには当てはまらなくなりつつあります。消費電力差が縮小した今、バッテリー持ちを左右する最大の要因は、通信世代そのものよりも、SoCの世代とネットワーク品質へと移行していると言えるでしょう。
ユーザーが実践できる5G時代の最適化ポイント
5G時代にバッテリーを最適化する最大のポイントは、通信速度そのものではなく、通信状態の安定性をユーザー側でコントロールする意識を持つことです。多くの人は「5Gは速いが電池を食う」と感じていますが、実際には不安定な5G接続を掴み続ける状況こそが最大の電力ロスになります。
EricssonやSamsungの技術資料によれば、端末がセルエッジに位置し、微弱な5G信号と4G信号を頻繁に行き来する状態では、モデムとRF回路が常時フル稼働に近い状態になり、待受中であっても消費電力が大きく跳ね上がることが示されています。つまり、ユーザーができる最適化とは「速い5Gを使う」ことではなく、「無駄に探させない」ことなのです。
実践的な第一歩は、利用シーンごとにネットワーク挙動を理解することです。例えば屋内や地下、ビル街ではSub-6帯の減衰が大きく、端末は送信出力を引き上げがちになります。この状態でSNS閲覧や音楽ストリーミング程度の用途しかない場合、5Gに固執する合理性は低いと言えます。
| 利用シーン | 推奨通信状態 | バッテリーへの影響 |
|---|---|---|
| 屋外・基地局近傍 | 5G(安定時) | 短時間通信で効率良好 |
| 屋内・地下 | 4G/LTE | 送信出力低下で省電力 |
| 移動中(電車など) | 自動切替 | ハンドオーバー負荷を軽減 |
OoklaのSpeedtest Intelligenceによる分析でも、最新SoCを搭載した端末では5Gと4Gの消費電力差は6〜10%程度まで縮小しています。ただしこれは安定した5G接続が前提条件であり、品質が揺らぐ環境では逆に電池消費が急増する点が重要です。
そのため、OSが提供する「5Gオート」や「スマートデータモード」を正しく使うことが極めて効果的です。AppleやGoogleは公式サポート情報の中で、これらの機能がC-DRXなどの省電力制御と連動し、バックグラウンド通信時には自動的に低消費電力モードへ移行する仕組みを採用していると説明しています。
また、ガジェット好きほど見落としがちなのが、端末の対応周波数とキャリア構成の相性です。総務省資料やドコモの公開情報でも示されているように、日本独自バンドであるn79非対応端末では、5Gエリア内でも不安定な接続を繰り返すケースがあります。これは体感速度だけでなく、バッテリー寿命を静かに削る要因になります。
5G最適化とは設定をいじることではなく、通信を“減らす”発想に近いものです。高速通信が必要な瞬間だけ最大性能を使い、それ以外の時間は安定と省電力を優先する。この切り替えをユーザー自身が理解して行うことで、5G時代でもバッテリー持ちは確実に改善できます。
5G Advancedと6Gがもたらすバッテリーの未来
5Gの普及初期に顕在化したバッテリー消費の課題は、5G Advanced、そして6Gという次のフェーズにおいて、設計思想そのものが大きく転換されつつあります。高速化の代償として電力を消費する時代から、通信品質と省電力を同時に最適化する時代へ移行している点が最大の特徴です。
5G Advancedは3GPP Release 18以降で定義され、AIと機械学習をネットワーク制御に本格的に組み込むことが前提となっています。EricssonやQualcommの技術資料によれば、基地局側が端末ごとの通信頻度や移動傾向を予測し、ビームフォーミングやC-DRXの周期を動的に調整する仕組みが検討されています。これにより、端末は常時アンテナを最大出力で稼働させる必要がなくなり、待受時や低トラフィック時の消費電力が大幅に削減されます。
| 世代 | 省電力の中核技術 | バッテリーへの影響 |
|---|---|---|
| 5G(初期) | NSA、固定DRX | 二重接続により消費電力が増加 |
| 5G Advanced | AI制御DRX、動的ビーム管理 | 待受・軽通信時の電力を大幅削減 |
| 6G | 超低電力通信、環境発電連携 | 充電頻度そのものを減らす可能性 |
特に注目すべきは、5G Advancedで進化するWake-Up Signalの高度化です。Rohde & Schwarzの解説では、従来は周期的に起動していた受信回路を、必要な瞬間だけ起動させる精度がさらに向上するとされています。これにより、スマートフォンだけでなく、スマートウォッチやARグラスのような小型デバイスでも、「5G対応=電池が持たない」という常識が崩れ始めています。
そして6Gでは、バッテリーの考え方自体が変わる可能性があります。6G研究ではテラヘルツ波の利用と並行して、通信に必要なエネルギーを極限まで下げる設計が重視されています。Samsungや大学研究機関のロードマップでは、周囲の電波や光、振動から微小な電力を得るエネルギーハーベスティングとの組み合わせが示されており、センサーや一部デバイスでは「充電不要で動作する通信」が現実的な目標として語られています。
重要なのは、5G Advancedと6Gが単なる速度競争ではなく、バッテリー寿命を含めたユーザー体験全体を最適化する方向に進んでいる点です。現在の5Gで蓄積された電力効率の知見は、次世代通信において「減らないバッテリー」を実現するための土台となりつつあります。
参考文献
- Ookla:Combating 5G Battery Drain Concerns
- Samsung:5G Standalone Architecture Technical White Paper
- Ericsson:Breaking the energy curve: Network energy consumption modeling
- Qualcomm:Snapdragon X70 Modem-RF System
- ITmedia Mobile:終わりの見えないドコモの通信品質改善 d払いアプリの活用で…
- Rakuten Mobile:Rakuten Mobile Launches Commercial Services Using 700 MHz “Platinum Band”
- Rohde & Schwarz:Power Saving Techniques for User Equipment
