スマートフォンでRAW撮影をしても、結局は一眼カメラには及ばない。そう感じた経験はありませんか。
しかしPixel 10 Proの登場により、その常識は大きく揺らいでいます。ハードウェアとソフトウェアが深く結びついた計算写真の世界で、RAWという概念そのものが進化し始めているからです。
本記事では、Pixel 10 Proが備える12-bit DCG対応センサーとTensor G5の組み合わせが、静止画や動画の現像耐性にどのような変化をもたらしたのかを掘り下げます。
純正カメラアプリで得られるRAWと、サードパーティアプリで取得できるセンサー直RAWの違いを整理し、それぞれがどんな撮影者に向いているのかを明確にします。
さらに、日本特有の撮影環境である都市のミックス光や湿度の高い風景、人気の星景撮影といったシーンでの実用性にも注目します。
ガジェットとしてのPixel 10 Proに興味がある方だけでなく、RAW現像を楽しみたい写真・動画クリエイターにとっても、新たな可能性を発見できる内容です。
2026年のスマートフォン撮影でRAWが再注目される理由
2026年に入り、スマートフォン撮影においてRAWが再注目されている最大の理由は、ハードウェア性能の進化がソフトウェア処理の限界を露呈し始めた点にあります。これまでのスマートフォンは、計算写真学によって誰でも簡単に「それなりに綺麗」な写真を撮れることが価値でした。しかし近年、その自動処理が画一的な質感や階調の圧縮を生み、表現の自由度を狭めているという認識が、ガジェット愛好家やハイアマチュア層の間で共有され始めています。
象徴的な存在がPixel 10 Proです。Samsung製GNVセンサーとTensor G5の組み合わせにより、スマートフォンでは珍しい12-bit Dual Conversion Gain対応のRAW取得が現実的になりました。Photons to Photosのセンサーデータ分析によれば、1/1.31インチクラスとしては例外的に広いダイナミックレンジを中〜高感度域でも維持しており、シャドーを大きく持ち上げても階調が破綻しにくい特性が確認されています。これは、単なるJPEG耐性ではなく、現像前提のRAWだからこそ意味を持つ進化です。
また、DxOMarkなどの評価機関も指摘している通り、近年のスマートフォンはHDR処理が強力すぎるがゆえに、ハイライトや中間調が撮影時点で“完成”してしまう傾向があります。RAWで撮ることで、こうしたトーンマッピング前の情報を保持し、撮影者自身が最終的な明暗や色を決定できる余地が生まれます。撮る行為と仕上げる行為を分離できる点が、RAW回帰の本質です。
| 観点 | 自動処理中心 | RAW前提 |
|---|---|---|
| 階調の自由度 | 限定的 | 非常に高い |
| ノイズの質 | 除去済みで均一 | 後処理に最適なランダム性 |
| 表現の個性 | 機種依存 | 撮影者依存 |
さらに、LightroomやDaVinci Resolveに代表されるAI現像・ノイズ除去技術の進歩もRAW再評価を後押ししています。センサー由来の情報量が多いほどAIは正確に判断できるため、RAWとの相性は年々向上しています。Adobeの開発者コミュニティでも、スマートフォンRAWの品質向上がワークフロー全体を変えつつあると語られています。
2026年のRAW再注目は、懐古ではありません。スマートフォンが“自動で綺麗に撮る道具”から、“意図を反映できる撮影機材”へ変わり始めた結果であり、その転換点にRAWが再び立っているのです。
Pixel 10 Proのカメラハードウェアが持つ物理的ポテンシャル

Pixel 10 Proのカメラが評価される際、AI処理やソフトウェアの巧みさが語られがちですが、その土台となる物理ハードウェア自体も非常に高い完成度を持っています。RAW現像耐性の上限を決めるのは最終的に光学とセンサーの能力であり、この点においてPixel 10 Proはスマートフォンとしては明確なポテンシャルを備えています。
メインカメラに採用されているのはSamsung製の50MP GNVセンサーで、サイズは1/1.31インチ、画素ピッチは1.2µmです。近年は1インチセンサーを搭載する競合機も増えていますが、DxOMarkやPhotons to Photosの測定によれば、このクラスのセンサーとしては非常に優れたダイナミックレンジ特性を示しています。特に低ISO域での階調の滑らかさは、後処理を前提としたRAW撮影において大きな武器になります。
| 項目 | Pixel 10 Pro メインカメラ | 意味する物理的強み |
|---|---|---|
| センサーサイズ | 1/1.31インチ | 高感度と解像のバランスが良い |
| 画素ピッチ | 1.2µm(ビニング時2.4µm相当) | ノイズ耐性と階調保持に有利 |
| レンズ | f/1.68 広角 | 光量確保とシャッタースピード短縮 |
このセンサーの真価を引き出しているのが、12-bit Dual Conversion Gain技術です。CMOSセンサー内部で電荷容量を切り替えることで、シャドー側では低ノイズ、ハイライト側では高い飽和耐性を同時に実現します。Photons to Photosのデータでも、中感度から高感度域にかけてダイナミックレンジの落ち込みが緩やかであることが示されており、これは純粋にハードウェア設計の完成度によるものです。
12-bit化によって階調情報は従来の10-bit比で4倍に増加します。この差は数値以上に実感的で、空や逆光シーンの微妙なグラデーション、シャドーを持ち上げた際のトーンの粘りに直結します。AdobeやDxOMarkが指摘するように、RAW編集時のバンディング耐性はビット深度に大きく依存するため、この点はPixel 10 Proの物理的な強みと言えます。
さらに、f/1.68という明るいレンズも見逃せません。単に背景をぼかすためではなく、センサーに到達する光子数を増やすことで、ISOを抑えた撮影が可能になります。結果としてリードノイズや量子ノイズの影響が減り、RAWデータの質そのものが底上げされます。これはどれだけ高度なAI処理でも後から再現できない、光学系ならではのアドバンテージです。
総合すると、Pixel 10 Proのカメラは「サイズで殴る」タイプではありませんが、センサー設計、ビット深度、レンズの明るさが高次元で噛み合っています。ソフトウェアに頼らずとも、素材としてのRAWがしっかりしているという点こそが、このハードウェアが持つ最大の物理的ポテンシャルだと言えるでしょう。
12-bit Dual Conversion Gainとは何か
12-bit Dual Conversion Gainは、Pixel 10 ProのRAW現像耐性を語るうえで避けて通れない中核技術です。従来のスマートフォンカメラがソフトウェア処理でダイナミックレンジを拡張してきたのに対し、この技術はセンサー自体が捉えられる光の情報量を物理的に増やす点に本質的な価値があります。
Dual Conversion Gain、通称DCGとは、CMOSセンサー内部で電荷を電圧に変換する際の容量を切り替える仕組みです。低照度に強い高ゲインモードと、白飛びに強い低ゲインモードを状況に応じて使い分け、あるいは同時に扱うことで、暗部と明部の両立を図ります。Samsungのセンサー技術解説によれば、この方式は読み出しノイズの低減とフルウェル容量の拡張を同時に実現できるとされています。
Pixel 10 Proで特筆すべきなのは、DCGと組み合わせて12-bitの色深度がハードウェアネイティブで有効化されている点です。一般的なスマートフォンRAWが10-bit、すなわち1024階調であるのに対し、12-bitでは4096階調を扱えます。この差は数値以上に実写で効いてきます。
| 項目 | 10-bit RAW | 12-bit DCG RAW |
|---|---|---|
| 階調数 | 1024 | 4096 |
| グラデーション耐性 | 空や夕景で段差が出やすい | 滑らかでバンディングが出にくい |
| シャドー持ち上げ | 色転びや破綻が出やすい | トーンの連続性を保ちやすい |
Photons to Photosが公開しているダイナミックレンジ評価の考え方に照らすと、階調数の増加は単に編集余地が広がるだけでなく、極端な補正をかけた際の破綻点を後ろに押し下げる効果があります。特に日本の撮影環境で多い曇天や逆光の街並みでは、空の微妙な濃淡や建物の陰影を同時に扱う場面が多く、その差が如実に現れます。
また、DxOMarkなどが指摘するように、Pixel 10 Proは中〜高感度域でのダイナミックレンジ低下が緩やかです。これはDCGによる読み出しノイズ低減の恩恵が、ISOを上げた状態でも持続するためです。結果として、RAW現像時にシャドーを数EV持ち上げても、粒状感が破綻しにくい「扱いやすいノイズ」に留まります。
重要なのは、この恩恵が純正カメラアプリだけで最大化されるわけではない点です。専門家レビューや開発者コミュニティの検証によれば、サードパーティ製アプリを通じてセンサー直の12-bit DCG RAWを取得した場合、トーンカーブやノイズ処理が焼き付けられていないため、現像者の意図をより忠実に反映できます。これは一眼カメラにおけるRAWワークフローに近い感覚です。
つまり12-bit Dual Conversion Gainは、Pixel 10 Proを「撮って終わりのスマートフォン」から、「撮影後の編集で完成させる道具」へと変える基盤技術です。RAW現像を前提とするユーザーにとって、この仕組みを理解しているかどうかが、得られる画の質を大きく左右します。
純正カメラRAWとセンサー直RAWの決定的な違い

純正カメラRAWとセンサー直RAWの違いは、単なる画質の好みではなく、どこまで撮影後に介入できるかという思想の違いにあります。見た目は同じDNG形式でも、その中身はまったく別物です。
純正カメラRAWは、Googleが長年磨き上げてきたコンピュテーショナル・フォトグラフィーの成果が前提に組み込まれています。DxOMarkの評価でも指摘されている通り、PixelのRAWは多フレーム合成とノイズ平均化を経た状態で保存され、撮影直後から破綻しにくい完成度を備えています。
一方でセンサー直RAWは、MotionCam Proなどを介してISP処理を回避し、センサーが捉えた電気信号に限りなく近いデータを記録します。Photons to Photosが示すように、Pixel 10 ProのGNVセンサーはDCG有効時に高いダイナミックレンジを持ちますが、その恩恵を最大限引き出せるのがこの経路です。
| 項目 | 純正カメラRAW | センサー直RAW |
|---|---|---|
| 生成プロセス | 多フレーム合成+トーン調整済み | 単写中心の生データ |
| ノイズ特性 | 非常に少ないが質感は均一 | 多いがランダムで除去しやすい |
| 階調の扱いやすさ | 最初から整っている | 後処理次第で大きく変化 |
AdobeのLightroomコミュニティでも議論されているように、純正RAWはハイライトやシャドーがすでに圧縮されているため、スライダー操作に対する反応が穏やかです。これは失敗写真を減らす利点である一方、大胆な露出補正では限界が早く訪れるという側面もあります。
対照的にセンサー直RAWは、初見では眠くノイズの多い画像に見えます。しかし12-bitリニアデータが保持されているため、AIノイズ除去や手動カーブ調整を行うと、色と階調が一気に立ち上がります。海外のプロレビューでも「扱いづらいが報酬が大きいRAW」と評されています。
つまり純正カメラRAWは誰でも安定した結果を得るためのRAWであり、センサー直RAWは時間と技術を投資する人のためのRAWです。同じPixel 10 Proでも、この選択によって撮影体験と最終的な表現力は決定的に変わります。
静止画RAWにおけるダイナミックレンジと現像耐性
静止画RAWにおけるダイナミックレンジと現像耐性は、Pixel 10 Proの評価が最も割れるポイントです。結論から言えば、この機種のRAWは「どのRAWか」を理解して初めて真価が見えてきます。一眼カメラ的な粘りを期待すると戸惑う一方、スマートフォンとして見れば異例の情報量を備えています。
まずダイナミックレンジの物理的な裏付けとして、Photons to Photosによる測定データが参考になります。Samsung GNVセンサーにDCGが有効なPixel 10 Proは、低ISO域で約12.8EVという数値が推定されており、1/1.31インチ級センサーとしてはトップクラスです。DxOMarkの評価でも、暗部ノイズの低さと中間調の安定性が強調されています。
| ISO感度 | 推定ダイナミックレンジ | 現像時の挙動 |
|---|---|---|
| ISO 50 | 約12.8EV | 空や逆光の階調が滑らかで破綻しにくい |
| ISO 100 | 約11.9EV | シャドーを+3EV持ち上げても輝度ノイズが細かい |
| ISO 800 | 約9.8EV | 暗部の情報保持が競合機より安定 |
実際の現像耐性で最も恩恵を感じるのはシャドー側です。純正カメラアプリで生成されるDNGは、多フレーム合成によってリードノイズが平均化されており、露出補正を+3EV前後まで行ってもディテールが急激に崩れません。これはDxOMarkが指摘する「低照度でのS/N比の高さ」と一致する挙動です。
一方で、ハイライト側の耐性は注意が必要です。GoogleのHDR+処理は撮影時点でハイライトを積極的に圧縮するため、DNGであっても白側の階調がすでに均されているケースがあります。Adobe Lightroomでハイライトを大きく下げても、雲の立体感や金属反射のピークが戻りきらない場面があり、TechRadarの比較レビューでも同様の指摘が見られます。
また、シャドーを極端に持ち上げた際に報告されているマゼンタ被りも、現像耐性を語る上で無視できません。Adobeのコミュニティでは、Pixel 10 ProのRAWで暗部が紫転する事例が複数共有されており、ブラックレベルの解釈やレンズシェーディング補正が影響している可能性が示唆されています。この点はセンサー性能というより、RAWプロファイルと現像ソフト側の問題に近いと言えるでしょう。
総合すると、Pixel 10 Proの静止画RAWは、露出ミスや逆光を安全にリカバーする耐性には非常に強い一方、ハイライトを後処理で作り込む余地は限定的です。撮影時にややアンダー目で露出を決め、シャドー側の余裕を活かすことで、このセンサーとDCGのポテンシャルを最も引き出しやすくなります。
シャドー復元で見える強みとマゼンタ被りの課題
Pixel 10 ProのRAW現像耐性を語るうえで、このセクションは多くのユーザーが最も強い印象を受ける部分です。シャドー復元の驚異的な粘りと引き換えに、条件次第で顕在化するマゼンタ被りという明確な課題が同時に存在するからです。
まず強みであるシャドー復元性能ですが、+3EVから+4EVといった極端な持ち上げを行っても、輝度情報が破綻しにくい点は特筆すべきです。Photons to Photosが公開しているPDR測定データでも示されている通り、Pixel 10 Proは中〜高感度域でダイナミックレンジの落ち込みが緩やかで、DCGによるリードノイズ低減の恩恵が明確に表れています。
特に純正カメラアプリが生成するDNGでは、多フレーム合成によるノイズアベレージングが効いており、暗部を大胆に持ち上げても粒状感が極めて細かいまま残ります。都市夜景の路地裏や、逆光気味の室内撮影など、日本の実用シーンでは「黒を救える安心感」が非常に高いと感じられるはずです。
シャドー耐性の本質は「ノイズが少ない」ことではなく、「持ち上げた後も階調が連続している」点にあります。
一方で、Lightroomなどでシャドーを深く持ち上げた際に報告されているのが、いわゆるマゼンタ被りです。本来ニュートラルであるべき暗部が紫寄りに転び、特に壁面や夜空、黒い衣服で目立ちやすい傾向があります。Adobeの公式コミュニティでもPixel 10世代のRAWについて同様の指摘が複数確認されています。
この現象は、センサーのブラックレベル設定と、現像ソフト側のカメラプロファイル解釈のズレが主因と考えられています。加えて、レンズシェーディング補正がノイズフロア付近の色成分を過剰に増幅している可能性も指摘されています。つまり、センサー性能そのものよりも、RAWメタデータと現像エンジンの相性問題と言えます。
| 項目 | シャドー復元時の挙動 | 実用上の評価 |
|---|---|---|
| 輝度ノイズ | 非常に細かく、破綻しにくい | 大幅な露出補正が可能 |
| 色ノイズ | 条件次第でマゼンタ方向に転ぶ | 補正前提の運用が必要 |
| 階調連続性 | 12-bit DCGの恩恵で滑らか | 風景・夜景に有利 |
実践的な回避策としては、現像時にデフォルトのGoogle Pixelプロファイルを避け、Adobe StandardやAdobe Colorへ切り替えるだけで色被りが大きく緩和されるケースがあります。また、シャドーを一気に持ち上げるのではなく、トーンカーブで中間調から段階的に持ち上げることで、マゼンタ成分の強調を抑えられます。
興味深いのは、純正JPEGやHEIFではこの問題がほぼ完全に抑制されている点です。これはGoogleのISP段階でブラックレベル補正と色ノイズ処理が最適化されていることを示しており、RAWの自由度と引き換えにユーザー側へ調整責任が委ねられている構図が浮かび上がります。
総じて、Pixel 10 Proのシャドー復元はスマートフォンの枠を超えた耐性を持つ一方、マゼンタ被りという癖を理解せずに扱うと評価を落としかねません。この二面性を把握したうえで使いこなせるかどうかが、本機を「編集耐性の高いRAWカメラ」と感じるか、「扱いづらいRAW」と感じるかの分かれ目になります。
天体写真と低照度撮影でPixel 10 Proは何ができるのか
天体写真や低照度撮影において、Pixel 10 Proが発揮する強みは、単なる高感度性能ではなく、**計算写真とセンサー物理の融合による再現力**にあります。特に日本の撮影環境は、都市部の深刻な光害と、山間部や海岸線に残る暗夜が混在しており、スマートフォンの実力差が最も顕在化するジャンルだと言えます。
Pixel 10 Proを三脚に固定すると自動で有効になる天体写真モードは、最大約4分間の撮影プロセスの中で、短時間露光を複数回繰り返し、星の動きを補正しながら合成します。Googleの公式解説やDxOMarkの評価によれば、この多フレーム合成によって、都市部でも肉眼では見えない天の川の構造や星雲の存在感を浮かび上がらせることが可能です。
一方で、このモードは完成度が高い反面、**星の情報を積極的に整理しすぎる傾向**があります。天文学や天体写真の分野で指摘されてきた、いわゆるスタ―イーター問題が完全に解消されたわけではなく、微光星がノイズとして処理されるケースも確認されています。これはGoogleのアルゴリズムが「見栄え」を優先している結果であり、記録性より鑑賞性を重視した設計だと理解するのが現実的です。
その選択肢が、サードパーティアプリを用いた12-bit DCG対応のセンサー直RAW撮影です。Photons to Photosのセンサーデータ分析でも示されているように、Pixel 10 Proは中〜高感度域でのダイナミックレンジ低下が緩やかで、低照度下でもシャドー側の情報を豊富に保持します。これにより、光害で白く濁った夜空を現像時に引き締めても、階調が破綻しにくいという特性が得られます。
実際に国内外の星景写真家の検証では、センサー直RAWをPCでスタック処理することで、アンタレスの赤みやリゲルの青白さといった恒星固有の色が明確に分離できることが報告されています。これは12-bit階調とDCGによる低リードノイズの恩恵であり、純正モードでは得られない表現です。
| 撮影アプローチ | ノイズ耐性 | 星の色再現 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| 純正天体写真モード | 非常に高い | 控えめ | 手軽な記録・SNS共有 |
| センサー直RAW撮影 | 現像次第 | 非常に高い | 作品制作・本格現像 |
低照度の風景撮影でも同様で、純正処理は街灯やネオンが混在する夜景を破綻なくまとめ上げますが、質感は均質化されがちです。対してRAWでは、暗部のわずかな色温度差や湿度感を丁寧に拾い上げる余地が残されます。Googleの画像処理思想を活かすか、センサーの素性を引き出すか、その選択肢をユーザーに委ねている点こそが、Pixel 10 Proの天体写真・低照度撮影における最大の価値だと言えるでしょう。
12-bit RAW動画が切り開くモバイル映像制作の可能性
12-bit RAW動画は、モバイル映像制作の前提条件そのものを大きく書き換えつつあります。従来のスマートフォン動画は、撮影時点で色や階調が強く固定され、編集では「微調整」が限界でした。しかしPixel 10 Proが対応する12-bit RAW動画では、撮影後の編集耐性が桁違いに向上し、映像制作の主戦場が確実にモバイルへと近づいています。
**12-bitとは4096階調の情報量を持つことを意味し、10-bit動画の約4倍の色深度**を確保できます。これにより、夕焼け空や逆光シーンで起こりがちなバンディングを抑えながら、ハイライトからシャドーまで滑らかなグラデーションを維持できます。米国のポストプロダクション業界でも参照されるDaVinci Resolveの公式ドキュメントでは、RAWワークフローがカラーグレーディングの自由度を飛躍的に高めると明言されています。
Pixel 10 Proの場合、Samsung GNVセンサーのDCG技術とTensor G5の処理能力により、スマートフォンでありながらシネマカメラに近いデータ取得が可能です。MotionCam Proを用いたCinemaDNG収録では、ホワイトバランスやISOを撮影後に変更でき、照明条件が刻々と変わるドキュメンタリー撮影やVlog制作で大きな武器になります。
| 項目 | 一般的な10-bit動画 | 12-bit RAW動画 |
|---|---|---|
| 色階調 | 約10億色相当 | 約680億色相当 |
| 露出補正耐性 | 限定的 | 大幅に高い |
| 撮影後調整 | 制限あり | 自由度が極めて高い |
DxOMarkの動画評価でも、RAWベースのワークフローはハイライト保持と暗部ノイズ制御の両立に有効であると分析されています。特に日本の都市部のようなネオンと暗部が混在する環境では、12-bit RAW動画のダイナミックレンジがそのまま表現力の差になります。
一方で、データ量は1分あたり数GBに達し、ストレージや編集環境への要求は高くなります。それでも**スマートフォン単体でシネマクオリティに迫る映像素材を得られる意義は極めて大きい**です。12-bit RAW動画は、機材の制約で映像制作を諦めていた個人クリエイターにとって、新たな選択肢ではなく、現実的な制作手段として定着し始めています。
iPhone 17 Pro・Galaxy S25 Ultraとの立ち位置比較
Pixel 10 ProをiPhone 17 Pro、Galaxy S25 Ultraと並べたとき、その立ち位置は単純なカメラスペック比較では見えてきません。鍵になるのは、RAWデータへの向き合い方と、撮影後の自由度をどこまでユーザーに委ねているかという思想の違いです。
iPhone 17 Proは、Apple ProRAWやProRes RAWによって高い評価を受けていますが、AppleのISP処理は一貫して「完成度重視」です。TechRadarやTech Advisorの比較レビューによれば、iPhoneのRAWはハイライトのロールオフが自然で、失敗が少ない一方、ノイズリダクションやトーンカーブを完全に排除することはできません。これは、撮影から編集までの安定したワークフローを最優先するAppleの設計哲学の表れです。
一方でGalaxy S25 Ultraは、200MPセンサーによる圧倒的な解像力と光学望遠が武器です。ただしPhotons to Photosのデータが示す通り、0.6µmという極小画素ピッチはRAW現像時のシャドー耐性では不利に働きます。Samsungは高解像度をJPEGやHEIFで最大化する方向性が強く、RAWを深く追い込む用途では扱い手を選ぶポジションにあります。
| 機種 | RAWの性格 | 現像自由度 | 向いているユーザー像 |
|---|---|---|---|
| Pixel 10 Pro | DCG対応12-bit RAWが取得可能 | 非常に高い(アプリ次第) | 自分で作り込みたい撮影者 |
| iPhone 17 Pro | 完成度の高いProRAW | 高いが制御は限定的 | 安定した結果を求める人 |
| Galaxy S25 Ultra | 高解像度重視のRAW | 中〜高 | 望遠・解像力重視の人 |
この中でPixel 10 Proが占めるのは、最も「未加工の余地」を残したRAWを引き出せるスマートフォンという独自のポジションです。DxOMarkの評価でも、純正JPEGや動画ブーストの完成度は高い一方、真価はサードパーティアプリ経由でのRAW取得にあると読み取れます。
特にiPhone 17 Proとの決定的な違いは、AndroidのCamera2 APIを活用することで、ISP処理を実質的にバイパスできる点です。MotionCam Proなどを用いた12-bit DCG RAWは、YouTubeの比較検証でもProRes RAWと同等、あるいはシャドー耐性ではそれ以上と評価されています。ただし、その代償として発熱やデータ量、アプリ安定性といったリスクも背負います。
つまりPixel 10 Proは、iPhoneのような「誰が使っても高水準」でも、Galaxyのような「光学的万能機」でもありません。理解して使う人ほど評価が跳ね上がる、極端に振り切ったクリエイター寄りの端末です。この尖った立ち位置こそが、他の2機種にはないPixel 10 Proの存在意義だと言えるでしょう。
Pixel 10 Proはどんなユーザーに最適な選択か
Pixel 10 Proは、万人向けのフラッグシップというよりも、使い方が明確なユーザーほど満足度が高くなる端末です。特にカメラ体験において、その傾向が顕著です。Googleの思想が色濃く反映されたコンピュテーショナル・フォトグラフィーと、センサー直結のRAWという二つの顔を理解できるかどうかが、最適な選択かを分ける分岐点になります。
まず最適なのは、失敗しない高品質な写真を日常的に求めるユーザーです。純正カメラアプリが生成するDNGは、多フレーム合成によってノイズが極めて少なく、露出ミスへの耐性も高い設計です。DxOMarkの評価でも、Pixel 10 Proは暗所や逆光といった難しい条件で安定した結果を出すことが示されています。RAW現像に詳しくなくても、Lightroomなどで軽く調整するだけでSNSやブログに十分通用する画が得られる点は、大きな魅力です。
一方で、より強く刺さるのは「自分で画を作りたい」クリエイティブ志向のユーザーです。MotionCam Proなどのサードパーティアプリを用いれば、12-bit DCG対応のセンサー直RAWにアクセスできます。Photons to Photosによるダイナミックレンジ測定では、中〜高感度域で競合機より粘り強い特性が確認されており、シャドーを大胆に持ち上げる現像や、動画RAWのカラーグレーディングに真価を発揮します。スマートフォンでここまで編集耐性を楽しめる機種は、現状では限られています。
| ユーザー像 | 主な目的 | Pixel 10 Proが向く理由 |
|---|---|---|
| 一般ガジェット好き | 日常写真・記録 | 純正処理で高成功率、考えなくても綺麗 |
| 写真・映像好き | RAW現像・作品制作 | 12-bit DCG RAWによる高い編集耐性 |
| 発信者・制作者 | SNS・YouTube | 写真と動画を一台で完結できる柔軟性 |
逆に、シャッターを押すだけで完璧な色や質感を常に求め、編集作業を一切したくないユーザーにとっては、Pixel 10 Proのポテンシャルは持て余し気味になります。Googleの強めのトーンマッピングやハイライト圧縮は、撮って出しでは完成度が高い反面、好みが分かれるためです。
総じてPixel 10 Proは、自動と手動の間を行き来できるユーザーに最適な一台です。普段は気軽に撮り、ここぞという場面ではRAWを引き出して追い込む。その二段構えの運用を楽しめる人にとって、このスマートフォンは単なる撮影機材ではなく、創作意欲を刺激するツールになります。
参考文献
- DxOMark:Google Pixel 10 Pro XL Camera Test
- Photons to Photos:Photographic Dynamic Range versus ISO Setting
- TechRadar:I compared photos from the iPhone 17 Pro, Google Pixel 10 Pro, and Samsung Galaxy S25 Ultra
- PhoneArena:Pixel 10 Pro release date, price and features
- Adobe Product Community:Pixel 10 RAW appear tinted & blurred
- Reddit:You can bypass your pixel’s camera processing
