ノートPCを持ち歩くのが当たり前だった働き方は、いま大きな転換点を迎えています。2026年現在、iPad ProやGalaxy Tabといった高性能タブレットを中心に、リモートデスクトップ環境を主軸としたモバイルワークが急速に広がっています。

かつては「緊急時の代替手段」と見なされがちだったVDIやクラウドPCも、通信インフラやOS、ハードウェアの進化によって、日常業務を支える主力環境へと変貌しました。自宅やオフィスはもちろん、移動中や出先でも快適にフルデスクトップを操作できる時代が現実のものとなっています。

本記事では、最新タブレットの性能、iPadOS・Androidのデスクトップ化、Wi-Fi 7や5G SAによる通信品質の向上、主要VDIサービスの進化までを体系的に整理します。ガジェットやツールに関心の高い方が、自分に最適なモバイルワーク環境を見極められるよう、具体的かつ実践的な視点で解説します。

タブレットが主力ワーク環境になった理由

2026年に入り、タブレットが主力のワーク環境として定着した最大の理由は、もはや「軽くて持ち運べる補助端末」という位置付けを完全に脱した点にあります。ハードウェア、OS、通信インフラが同時多発的に進化した結果、**業務の中核を担う環境として合理的な選択肢**になりました。

まず無視できないのが、演算性能と描画処理能力の飛躍です。AppleのM5チップ搭載iPad ProやSnapdragon 8 Gen 5世代のAndroidタブレットは、4Kかつ高フレームレートのリモートデスクトップ映像を安定して処理できます。GeekbenchやAnTuTuといったベンチマークにおいても、これらのSoCはノートPC向けCPUに匹敵する結果を示しており、単なる体感ではなく数値としても裏付けられています。

加えて、AV1コーデックのハードウェアデコード対応が一般化した点は決定的です。MicrosoftやCitrixが採用する最新VDIプロトコルでは、同じ帯域でもより高精細な画面転送が可能になりました。**結果として「リモートだから荒い」「文字がにじむ」という不満はほぼ解消**されています。

観点 従来の認識 2026年の実態
性能 PCの簡易代替 高解像度VDIを余裕で処理
操作性 タッチ中心で非効率 マウス・キーボード前提で最適化
安定性 通信品質に左右されやすい Wi-Fi 7や5G SAで低遅延

次に重要なのが、OSレベルでのデスクトップ体験の成熟です。iPadOS 19やAndroid 16では、複数ウィンドウの自由配置、外部ディスプレイの本格対応、マウスキャプチャの改善が進みました。特にAndroid 16で標準化されたポインターロック機構は、CADや表計算といった精密操作を要する業務でも違和感を感じさせません。

この変化について、Gartnerのデジタルワークプレース分野の分析でも、モバイルOSが「消費向けUI」から「生産性重視UI」へ転換した点が評価されています。**OSがPC的な前提で設計され始めたこと**が、タブレットを主力に押し上げた大きな要因です。

さらに、日本国内の通信環境も見逃せません。Wi-Fi 7では無線区間の遅延が数ミリ秒レベルに達し、5G SAでは混雑環境でも安定したレスポンスが確保されています。総務省の技術検証でも、SA構成の5Gは従来方式に比べジッターが大幅に抑制されることが示されています。これにより、**場所を選ばない業務継続性**が現実のものとなりました。

最後に、セキュリティと運用の観点です。IPAのガイドラインでも推奨されるゼロトラストモデルにおいて、タブレットはシンクライアントとして理想的です。データを端末に残さず、認証と状態監視を継続的に行えるため、管理負荷とリスクを同時に下げられます。軽さや起動の速さといった物理的利点に、**企業ITとしての合理性が加わったこと**が、タブレットを主力環境へと押し上げました。

2026年の最新タブレット性能とVDI体験

2026年の最新タブレット性能とVDI体験 のイメージ

2026年のタブレットは、VDI体験を語るうえで「性能が足りるかどうか」という議論を完全に終わらせました。高解像度・高フレームレートのデスクトップ画面を、違和感なく持ち歩けるという点で、最新タブレットは業務用クライアントとして明確な到達点に達しています。

背景にあるのは、Apple M5チップやSnapdragon 8 Gen 5に代表されるSoCの飛躍的進化です。リモートデスクトップはサーバー側で処理するとはいえ、4Kクラスの映像を120fpsで受信・復号し、同時にWeb会議やチャットをローカルで動かすには高いGPU性能とメモリ帯域が不可欠です。2026年世代はその条件を余裕で満たしています。

AppleのiPad Proに搭載されたM5チップは、Geekbench 6などのベンチマークでデスクトップ向けCPUに匹敵するスコアを示しています。特にAV1コーデックのハードウェアデコード強化はVDI用途で決定的で、長時間接続でも発熱とバッテリー消費を抑えながら、文字やUIの細部までシャープに表示できます。Appleの公式技術資料でも、メディアエンジン効率の改善が強調されています。

一方、Android陣営ではSnapdragon 8 Gen 5が流れを変えました。AnTuTuで300万点を超えるGPU性能に加え、NPUを活用したAI超解像処理により、帯域が限られた環境でもVDI画面を鮮明に保てます。Qualcommの発表によれば、この世代では映像処理あたりの消費電力も大きく改善しており、屋外利用時の安定性が高まっています。

項目 iPad Pro(M5) Androidタブレット(Snapdragon 8 Gen 5)
映像デコード AV1ハードウェア対応、低発熱 AV1対応+AI超解像
GPU性能傾向 安定した高フレームレート 3D描画と並列処理に強み
VDI体験の特徴 長時間作業での安定性 高負荷作業時の滑らかさ

ディスプレイ性能も体験を大きく左右します。第2世代タンデムOLEDを採用したiPad Proは、100万対1クラスのコントラストにより文字の視認性が極めて高く、VDI特有のにじみ感を感じさせません。可変120Hz表示は、スクロール時の遅延感を視覚的に打ち消し、操作レスポンスを一段引き上げています。

実際の業務現場では、こうした性能が「使えるかどうか」ではなく「どこまで快適か」という評価軸に変わっています。MicrosoftやCitrixの公式ドキュメントでも、2026年時点ではモバイルクライアント側のボトルネックはほぼ解消されたと整理されています。最新タブレットは、VDI体験の質を左右する最後の不安要素を取り払った存在だと言えるでしょう。

iPad Pro(M5)がリモートデスクトップに強い理由

iPad Pro(M5)がリモートデスクトップ用途で高く評価される最大の理由は、クライアント端末としての完成度が2026年時点で一線を画している点にあります。単なる高性能タブレットではなく、VDIやDaaSを前提にした場合の体感品質が極めて安定していることが、業務利用での信頼につながっています。

まず中核となるのがM5チップのメディア処理能力です。包括的調査報告書によれば、M5はAV1コーデックのハードウェアデコード性能が大幅に強化されており、4K解像度かつ高フレームレートのリモート画面を長時間表示してもCPU負荷が極小に抑えられます。これはMicrosoftやCitrixが推進する次世代VDIプロトコル設計とも完全に一致しており、映像の滑らかさとバッテリー持続時間を同時に成立させている点が実務で効いてきます

加えて、iPad Proのディスプレイ品質はリモートデスクトップとの相性が非常に高いです。第2世代タンデムOLEDは高コントラストかつ輝度ムラが少なく、Windows UIやコード、表計算の細かい文字を長時間見続けても視認性が落ちにくい設計です。Appleが公式ドキュメントで示しているように、可変リフレッシュレートのProMotionは静止時に消費電力を抑制し、操作時のみ120Hzまで引き上げるため、リモート操作特有の視覚的な遅延感を脳が感じにくいという効果があります。

要素 iPad Pro(M5)の特徴 リモートデスクトップへの効果
メディアエンジン AV1を含むハードウェアデコード対応 高画質・低遅延でも発熱と電力消費を抑制
ディスプレイ 第2世代タンデムOLED、120Hz可変 文字の可読性向上、操作時の滑らかさ向上
入力系 高精度トラックパッドと汎用マウス対応 Windows操作との違和感を最小化

操作面でもiPad Proは優位性があります。iPadOS 19では汎用マウスサポートが成熟し、CitrixやWindows Appといった主要VDIクライアントがOS標準APIを前提に最適化されています。調査報告書でも触れられている通り、専用マウスが不要になったことで、ポインタ挙動の不整合や右クリック問題がほぼ解消され、Excel操作や管理画面の細かいUIでもストレスがありません。

さらに、Appleのエコシステム全体がリモートワーク前提に設計されている点も見逃せません。Thunderbolt経由で外部モニターや有線LANを接続すれば、即座に安定したVDI環境へ移行できます。Apple自身が開発者向け資料で示しているように、外部ディスプレイ接続時の描画パイプラインはmacOSに近い設計となっており、クラウドPCを“常用環境”として使う際の信頼性が高いのです。

これらの要素が組み合わさることで、iPad Pro(M5)は「持ち運べる高性能端末」ではなく、「どこでも同じデスクトップを再現できるシンクライアント」として完成しています。リモートデスクトップを業務の中核に据えるユーザーにとって、この一貫した体験こそが最大の価値だと言えます。

AndroidタブレットとSamsung DeXの実用性

AndroidタブレットとSamsung DeXの実用性 のイメージ

Androidタブレットの実用性を語るうえで、2026年時点でも中心的な存在となっているのがSamsung DeXです。単なる画面拡張モードではなく、**タブレットを瞬時にPCライクな作業環境へ変換する思想そのもの**が、DeXの本質です。

特にGalaxy Tab S11/S12シリーズでは、Snapdragon 8 Gen 5の性能向上とAndroid 16の標準デスクトップ機能を取り込み、DeXは完成度の高いワークスペースへ進化しています。外部モニター接続時の挙動は自然で、解像度やリフレッシュレートの制限を意識する場面はほとんどありません。

ウィンドウ操作の快適さは、Androidタブレットの中でも突出しています。ウィンドウのスナップ配置、自由なリサイズ、タスクバーからの即時切り替えなどは、WindowsやChromeOSに近い感覚で使えます。**VDIやリモートデスクトップを全画面で表示しながら、ローカルのブラウザやチャットツールを同時に扱う**といった実務的な使い方に強みがあります。

観点 Samsung DeX 一般的なAndroidタブレット
外部モニター時のUI 常時デスクトップUIで固定 ミラーモード主体
ウィンドウ管理 自由配置・スナップ対応 制限付きが多い
キーボード操作 PC互換ショートカットが豊富 対応が限定的

実務で評価が高いのが、キーボードショートカットの完成度です。Alt+Tabによるアプリ切り替えや、Windowsキーに相当する操作体系が整っており、**長年PCを使ってきたユーザーほど違和感が少ない設計**になっています。これはSamsungが法人市場を強く意識してきた結果とも言えます。

また、Android 16以降ではマウスキャプチャの挙動が改善され、DeX環境ではカーソルがシステム外へ逃げにくくなりました。Googleの公式ドキュメントでも、デスクトップ利用時のポインターロック強化が明言されており、CADや表計算ソフトの細かな操作でもストレスを感じにくくなっています。

Samsung自身もDeXを単なる付加機能ではなく、生産性の核として位置づけています。Samsung Electronicsの開発者向け発表では、DeX利用時の業務アプリ滞在時間が通常モードより長い傾向にあると示されており、**実際に仕事で使われているモードであること**が裏付けられています。

Androidタブレットはアプリ互換性や価格帯の広さが魅力ですが、DeX対応モデルに限っては「モバイル端末の延長」では終わりません。タブレット一台で持ち運び、デスクでは即PC環境に切り替える。この柔軟性こそが、Samsung DeXが2026年でも高く評価される最大の理由です。

入力デバイスと周辺機器が生産性を左右する

タブレットを用いたリモートデスクトップ環境において、最終的な生産性を決定づけるのは入力デバイスと周辺機器です。CPU性能や通信品質がいかに優れていても、キーボードやマウスの違和感は思考の流れを分断します。**入力の快適性は、ユーザーの集中力と作業速度に直結する「人間側のボトルネック」**だと言えます。

特に日本のビジネス環境で重要視されるのが、JIS配列キーボードへの対応です。MicrosoftやAppleのユーザビリティ研究でも、キー配列の不一致は入力ミスと修正回数を増やし、文章作成やプログラミングの効率を恒常的に低下させると指摘されています。iPad Pro用Magic KeyboardのJIS配列が高く評価される理由は、単なる純正アクセサリーだからではなく、VDI上のWindows環境と物理入力が完全に一致する点にあります。

一方でAndroidタブレットでは、外付けBluetoothキーボードの選定が生産性を左右します。Logicoolや国内メーカーのマルチデバイス対応モデルは、タブレットと社給PCを瞬時に切り替えられるため、VDI利用とローカル作業を並行するユーザーに適しています。**デバイス切替の手間が減るだけで、1日の認知的負荷は大きく軽減されます。**

周辺機器 主な役割 生産性への影響
JIS配列キーボード 正確な文字・記号入力 入力ミス削減、思考中断の防止
高精度マウス ポインティング操作 CADや表計算での操作速度向上
ドッキングステーション 外部機器接続の集約 設営時間短縮、作業環境の即時再現

マウスやトラックパッドも軽視できません。Logicool MX Master 4のような高DPIマウスは、VDI越しでも細かなポインタ操作を正確に伝えられます。これはCitrixやMicrosoftが公式に示している通り、操作イベントの精度が高いほどリモート側の補正処理が減り、体感遅延が小さくなるためです。iPad Proの大型トラックパッドも、ハプティックフィードバックの進化により、ドラッグや範囲選択の失敗が明確に減少しています。

さらに、USB4やThunderbolt対応のドッキングステーションは、入力環境を一変させます。ケーブル1本で外部モニター、有線LAN、給電を同時に確保できるため、タブレットを置くだけで即座に「いつもの作業環境」が立ち上がります。これはガートナーが提唱するデジタル従業員体験の観点でも、作業開始までの摩擦を減らす重要な要素とされています。

**優れた入力デバイスと周辺機器は、タブレットVDIを“使える”環境から“手放せない”環境へと引き上げます。**生産性の差は数値化しにくいものの、日々のストレス低減と作業リズムの安定という形で、確実に積み重なっていきます。

iPadOS 19とAndroid 16のデスクトップ進化

2026年時点で、タブレットのデスクトップ体験を語る上で中心となるのが、iPadOS 19とAndroid 16の進化です。両OSは単なるマルチタスク強化にとどまらず、リモートデスクトップを前提とした「実務向けUI」へと大きく舵を切っています。

iPadOS 19の最大の変化は、外部ディスプレイ利用時における完成度の飛躍です。Stage Manager 2.0ではウィンドウ配置の制約がほぼ撤廃され、サイズ変更や重なり順を自由に制御できます。AppleがWWDCで示した設計思想どおり、VDIクライアントを外部モニターで全画面表示しつつ、本体側にTeamsやメモアプリを常駐させる運用が現実的になりました。

外部ディスプレイ接続時にmacOSライクなメニューバーが表示される点も重要です。これにより、Citrix WorkspaceやWindows Appなどの操作動線がPCに近づき、マウス操作の迷いが減少しました。Appleの開発者ドキュメントによれば、このUI変更は「キーボードとポインタ操作を前提とした生産性向上」を主目的としています。

観点 iPadOS 19 Android 16
ウィンドウ管理 Stage Manager 2.0で自由配置 標準デスクトップウィンドウ対応
外部ディスプレイ メニューバー表示、実質デュアル環境 タスクバー常駐でPCライク
マウス操作 OS標準APIで安定 ポインターロックが大幅改善

一方でAndroid 16は「誰でもDeX的体験を得られる」点が本質的な進化です。AOSPレベルでデスクトップウィンドウイングが標準化され、Pixel Tabletなど非Samsung端末でも複数ウィンドウを直感的に扱えます。Google公式のAndroid Developers Blogでも、タブレットと外部モニターでの生産性向上が明確に打ち出されています。

特にVDI用途で評価が高いのが、マウスキャプチャの改善です。Android 16では新APIにより、リモートデスクトップアプリがカーソルを排他的に制御できます。これにより、CAD操作や右ドラッグを多用する業務でも、カーソル逸脱や二重表示といった長年の課題が解消されました。

結果として、iPadOS 19は完成度と安定性、Android 16は自由度と拡張性で明確に方向性が分かれています。どちらも「タブレットでPC的作業を行う」段階を超え、クラウド上のWindows環境を快適に扱うための土台として成熟したと言えます。

Wi-Fi 7と5G SAがもたらす低遅延体験

Wi-Fi 7と5G SAの本質的な価値は、通信速度そのものよりも体感遅延を限界まで削減した点にあります。リモートデスクトップでは、マウスを動かした瞬間やキー入力のレスポンスが作業効率を左右しますが、2026年時点の通信インフラは「ネットワークの存在を意識させない」水準に到達しています。

Wi-Fi 7では、IEEEが策定した802.11be規格に基づき、MLO(Multi-Link Operation)が本格運用されています。これは2.4GHz、5GHz、6GHz帯を同時利用する仕組みで、干渉や瞬間的なノイズが発生しても通信が途切れにくい設計です。国内通信事業者や大学の実測評価によれば、無線区間の遅延は平均1〜5ms程度に収まり、有線LANとほぼ同等の応答性が確認されています。

一方、モバイル環境で決定的な変化をもたらしたのが5G SAです。従来の5G NSAは制御信号に4G網を利用していたため、遅延やジッターが残っていましたが、SAでは完全に5G網へ移行しました。総務省の技術検証やキャリア各社の公開データでは、RTTが平均10ms前後まで短縮され、移動中や屋外でも安定した操作感が得られると報告されています。

Wi-Fi 7は「室内での究極の安定性」、5G SAは「場所を選ばない低遅延」を実現し、用途に応じて使い分けることで常に最適なレスポンスを確保できます。

特に注目すべきは、5G SAで実用化が進むネットワークスライシングです。法人向けにはVDIやWeb会議を優先処理する専用スライスが提供され始めており、混雑する駅構内やイベント会場でも操作遅延が増えにくい設計になっています。これはETSIや3GPPが定義する仕様に基づくもので、ベストエフォート型通信とは根本的に異なります。

主要な通信方式ごとの遅延特性を整理すると、体感差がより明確になります。

通信方式 平均RTT 操作体感
4G LTE 約45ms カーソル遅延を感じやすい
5G NSA 約35ms 改善するが揺らぎが残る
5G SA 約10ms ローカルPCに近い
Wi-Fi 7 約3ms 有線並みの即応性

この低遅延環境により、4K解像度の画面転送や120Hz表示でも入力と描画が同期し、文字入力、表計算、設計ツール操作まで違和感がほぼ消失します。業界アナリストであるGartnerも、超低遅延ネットワークはVDIの利用障壁を取り払う最大要因になると指摘しており、通信品質が生産性を直接規定する時代に入ったと言えるでしょう。

主要VDI・リモートデスクトップサービスの最新動向

2026年における主要VDI・リモートデスクトップサービスは、「単なる画面転送」から「クラウド前提の業務基盤」へと明確に進化しています。特にMicrosoft、Citrixといったエンタープライズ系ベンダーは、モバイル端末を前提とした最適化を加速させており、タブレット利用時の体験差は年々縮小しています。

MicrosoftのWindows Appは、AVDやWindows 365を横断的に扱える統合クライアントとして定着しました。2025年後半から本格展開されたAV1コーデックの標準対応により、同社の検証では従来比で約30〜40%の帯域削減を実現しています。これにより、5G回線や混雑したWi-Fi環境でも高解像度・高フレームレートを維持しやすくなりました。

また、Microsoft 365アプリに組み込まれたAgent Modeは、AI処理をクラウド側で完結させる設計です。Microsoftの公式技術解説によれば、Excelの高度な分析やCopilotによる文書生成をVDI上で行っても、クライアント側の負荷は最小限に抑えられています。タブレットの性能差が生産性に直結しにくくなった点は、大きな転換点です。

サービス 2026年の注目進化 タブレット利用時の強み
Windows 365 / AVD AV1標準化、Boot for Mobile 回線品質に左右されにくい安定表示
Citrix Workspace 汎用マウス完全対応 iPadOSでの操作遅延の少なさ
Splashtop 高精細4:4:4カラー クリエイティブ用途との親和性
TeamViewer DEX視点の統合 遠隔支援・現場DXとの融合

CitrixはiPadOSとの親和性をさらに高め、従来必須とされていた専用マウスを不要にしました。Citrixの技術ブログによれば、OS標準APIを活用したカーソル制御により、右クリックやドラッグ操作のレイテンシが体感レベルで改善しています。金融や公共分野で根強いCitrix需要を、モバイル環境でも維持できる要因です。

一方、SplashtopやTeamViewerは用途特化型の進化が目立ちます。Splashtopはワコム製ペンのリダイレクト精度向上やEDR連携を進め、教育・デザイン分野で評価を高めています。TeamViewerはGartnerの2026年レポートでも触れられている通り、DEXという視点から業務体験全体を可視化する方向へ舵を切りました。

総じて2026年のVDI市場は、「どのサービスが速いか」ではなく、「どの業務体験を最適化するか」で選ばれる段階に入っています。タブレットとの組み合わせを前提に設計された最新VDIは、従来のPC中心の評価軸では測れない価値を提供し始めています。

ゼロトラスト時代のタブレットVDIセキュリティ

ゼロトラスト時代において、タブレットVDIのセキュリティは「端末が社内にあるかどうか」という前提から完全に切り離されて考えられます。信頼できる場所やデバイスは存在しないという思想のもと、2026年のVDI環境では、接続のたび、そして接続中も継続的に安全性を検証する仕組みが中核を担っています。

特にタブレットは携帯性が高く、カフェや移動中の利用が前提となるため、ゼロトラストとの親和性が非常に高いデバイスです。IPAが公開しているテレワークセキュリティ関連ガイドラインでも、リモートアクセス時の多要素認証、端末状態の把握、通信経路の安全性確認が強調されており、VDIはそれを実装しやすい手段として位置付けられています。

2026年時点で主流となっているのが、MDMやEDRと連携したデバイスポスチャ評価です。OSのバージョン、セキュリティパッチ適用状況、Root化やJailbreakの有無、接続中のネットワーク種別などがリアルタイムで収集され、リスクレベルに応じてVDIの挙動が動的に変化します。

状況 リスク評価 VDI側の動作
管理下Wi-Fi+最新OS フルアクセス許可
公衆Wi-Fi接続 クリップボードや印刷を制限
不審な挙動検知 即時切断または閲覧専用化

このような制御はユーザー操作を介さず自動で行われるため、利便性を損なわずに安全性を引き上げられる点が重要です。MicrosoftやCitrixは、条件付きアクセスやコンテキストアウェア制御を標準機能として強化しており、Gartnerもゼロトラスト実装の成熟度がVDI選定の重要指標になっていると分析しています。

また、タブレットVDIの特性として見逃せないのが「データを端末に残さない」点です。画面転送のみで業務が完結するため、万一端末を紛失しても情報漏洩リスクは極小化されます。加えて、コピー&ペースト、ローカル保存、スクリーンショットといった操作をポリシーで細かく制御できるため、内部不正対策としても有効です。

ゼロトラストは単なるセキュリティ強化ではなく、柔軟な働き方を成立させるための前提条件です。タブレットVDIは、ゼロトラストを最も現実的に体現できるワークスペースとして、2026年の企業ITにおける標準的な選択肢になりつつあります。

日本企業・個人ユーザーに適した導入ポイント

日本企業や個人ユーザーがタブレットVDIを導入する際、2026年時点で最も重要なのは「最初から完璧を目指さない設計」です。IPAのテレワークセキュリティガイドラインでも示されている通り、段階的導入とスモールスタートは、コストとリスクを抑えつつ定着率を高める有効な手法とされています。

特に国内企業では、既存のWindows業務環境を一気に置き換えるのではなく、外出時や在宅勤務時のみタブレットからVDIに接続する併用モデルが現実的です。**タブレットはPCの代替ではなく、アクセス手段の最適化**と捉えることで、現場の抵抗感を最小限に抑えられます。

導入対象 適したアプローチ 期待できる効果
営業・外勤職 iPad + Windows 365 端末紛失時の情報漏えいリスク低減
管理・承認業務 タブレット単体VDI 移動時間の有効活用
個人事業主 Androidタブレット + Splashtop 低コストでの高性能環境

個人ユーザーの場合も考え方は共通です。自宅では外部モニターとWi-Fi 7、外出先では5G SAを使い分けることで、**どこでも同一の作業環境を呼び出せる体験**が得られます。AppleやMicrosoftが示す最新のユースケースでも、データを端末に残さないクラウド前提の働き方は、セキュリティと利便性を両立する現実解と位置付けられています。

導入初期に見落とされがちなのが、JIS配列キーボードや日本語入力環境の検証です。記号入力のズレや変換効率の低下は、日常業務では想像以上のストレスになります。**日本市場向けの周辺機器選定まで含めて設計することが、成功の分岐点**になります。

まずは対象ユーザーを限定し、通信品質・入力環境・VDI設定を検証する。このプロセスを踏むことで、日本企業・個人双方にとって、無理なく持続可能なタブレットVDI活用が実現します。

参考文献