大画面タブレットでの作業やエンタメ体験に、物足りなさを感じたことはありませんか。ノートPCでは重く、スマホでは狭い。その隙間を埋める存在として、タブレットは進化を続けています。
そんな中で登場したGalaxy Tab S11 Ultraは、14.6インチという圧倒的な画面サイズと5.1mmの極薄ボディを両立し、従来のAndroidタブレットの常識を大きく塗り替えました。特にイラスト制作や動画編集など、クリエイティブ用途を重視するユーザーにとって注目度の高い一台です。
本記事では、ディスプレイ技術、パフォーマンス、Sペンの描き味、iPad Pro M4との違い、そしてDeXやPC連携といった実用面までを多角的に整理します。Galaxy Tab S11 Ultraがどんな人にとって“最高の相棒”になり得るのかを、具体的なデータやユーザー評価を交えながら理解できる内容をお届けします。
- Androidタブレット市場におけるGalaxy Tab S11 Ultraの立ち位置
- 14.6インチという選択がもたらす作業効率と没入感
- Dynamic AMOLED 2Xの実力と1,600ニト高輝度の意味
- 5.1mm極薄ボディに詰め込まれた設計と拡張性
- MediaTek Dimensity 9400+の性能をベンチマークから読み解く
- SペンとWacom EMRが支持される理由
- Clip Studio Paintでのイラスト制作は快適か
- One UI 8とGalaxy AIが変える制作ワークフロー
- Samsung DeX仕様変更がユーザー体験に与える影響
- iPad Pro M4との比較で見える強みと弱み
- 参考文献
Androidタブレット市場におけるGalaxy Tab S11 Ultraの立ち位置
Galaxy Tab S11 Ultraは、Androidタブレット市場の中で明確に「量より質」「汎用より専門性」というポジションを占めています。スマートフォンと同様、タブレット市場でも出荷台数ベースではAppleのiPadシリーズが依然として優勢ですが、Samsungはシェア争いとは異なる土俵で勝負しています。14.6インチという他社が踏み込まない超大型ディスプレイと、クリエイティブ用途に特化した設計思想によって、Android陣営のフラッグシップとして独自の存在感を確立しています。
調査会社IDCのレポートによれば、世界のタブレット市場は教育用途や低価格帯が数量を支える一方で、高価格帯は「プロフェッショナル用途」「制作系ワークフロー」への需要が着実に拡大しています。Galaxy Tab S11 Ultraはまさにこの成長セグメントを狙った製品であり、一般的な動画視聴やWeb閲覧を主目的とするタブレットとは明確に一線を画しています。
特に日本市場においては、マンガ制作、イラストレーション、同人活動といった分野で「持ち運べる制作環境」へのニーズが高いことが知られています。Samsungが長年採用してきたWacom EMR方式のSペンは、国内のペンタブレット文化と親和性が高く、Apple Pencilとは異なる書き味を評価するクリエイター層から支持を集めています。Galaxy Tab S11 Ultraは、Androidタブレットでありながら“液晶ペンタブレットの延長線上”として選ばれている点が、市場での特異性を物語っています。
| 市場セグメント | 主な用途 | Galaxy Tab S11 Ultraの位置付け |
|---|---|---|
| 低価格帯Androidタブレット | 動画視聴・学習 | 競合しない |
| iPad / iPad Air | 一般用途・軽作業 | 用途が異なる |
| iPad Pro | プロ制作・業務 | 直接競合 |
Samsung自身も公式発表の中で、Tab S11 Ultraを「エンターテインメントと生産性の融合」と位置づけていますが、実態としては生産性、とりわけ創作活動への比重が極めて高いモデルです。GSMArenaやTom’s Guideといった専門メディアのレビューでも、「一般ユーザーにはオーバースペックだが、ハマる人には代替がない」という評価が共通しています。
つまりGalaxy Tab S11 Ultraは、Androidタブレット市場全体を代表する存在というより、Androidで最高の制作環境を求める層に向けた象徴的フラッグシップです。数を売るための製品ではなく、Androidでもここまでできるという技術的・思想的な到達点を示す役割を担っており、その立ち位置は今後のAndroidタブレットの方向性を占う上でも重要な意味を持っています。
14.6インチという選択がもたらす作業効率と没入感

14.6インチという画面サイズは、単に「大きい」という一言では片付けられない作業体験の質的変化をもたらします。Galaxy Tab S11 Ultraでは、このサイズが作業効率と没入感の両立を成立させる中核要素として機能しています。特にガジェットや制作ツールに関心の高いユーザーほど、その恩恵を体感しやすい設計です。
最大の価値は、表示領域の広さが思考の中断を減らす点にあります。14.6インチ・2960×1848ピクセルというキャンバスでは、アプリのUI、ツールパネル、コンテンツを同時に表示しても圧迫感が生じにくく、操作のたびに表示を切り替える必要が減ります。ヒューマンインターフェース分野の研究でも、画面切替や視線移動の頻度が減るほど認知負荷が下がり、生産性が向上することが示されています。
この特性は、イラスト制作や動画編集だけでなく、情報収集や資料作成といった軽作業にも波及します。ブラウザで複数の情報を参照しながらメモを取る、PDFを原寸に近いサイズで確認するといった行為が、拡大縮小なしで完結します。結果として、作業リズムが一定に保たれ、集中状態が途切れにくくなります。
| 画面サイズ | 表示できる情報量の感覚 | 作業時の特徴 |
|---|---|---|
| 11インチ級 | 必要最小限 | 頻繁なUI切替が必要 |
| 12.9〜13インチ級 | やや余裕あり | 用途次第で快適 |
| 14.6インチ | 常時余裕あり | PCに近い作業感覚 |
さらに没入感という観点では、Samsungが長年培ってきた大型OLEDの知見が生きています。14.6インチという視界を占有するサイズに、Dynamic AMOLED 2Xの高コントラストと深い黒が組み合わさることで、視覚的な「枠」を意識しにくくなります。映像分野では、ディスプレイの占有率が高いほど主観的没入感が高まることが知られており、これは映画鑑賞やゲーム体験にも直結します。
興味深いのは、このサイズが「据え置き」と「モバイル」の境界を曖昧にしている点です。ノートPCほどの作業領域を持ちながら、タッチとペン操作を前提とした距離感で使えるため、机に向かう姿勢そのものが変わります。結果として、従来はPCで行っていた作業の一部が自然にタブレットへ移行し、ワークフロー全体が軽量化されます。
14.6インチは万人向けのサイズではありませんが、作業効率と没入感を重視するユーザーにとっては、明確な理由をもって選ぶ価値のある選択肢です。単なる大画面ではなく、思考と視線の動きを最適化するための道具として、このサイズは完成度の高いバランスに到達しています。
Dynamic AMOLED 2Xの実力と1,600ニト高輝度の意味
Galaxy Tab S11 Ultraのディスプレイを語るうえで中核となるのが、Dynamic AMOLED 2Xの完成度と、ピーク1,600ニトという高輝度がもたらす体験の質です。単に「明るい」「大きい」という次元ではなく、**視認性・色再現・没入感を同時に引き上げる総合的な進化**がこの世代で明確になっています。
14.6インチという巨大な表示領域に2960×1848ピクセルを敷き詰めた本パネルは、ppiこそスマートフォンより控えめですが、一般的なタブレット視聴距離ではドット感を意識させません。SamsungのOLED部門は長年テレビや業務用モニターで培った技術を持ち、第三者レビューでもコントラスト表現と階調の滑らかさは一貫して高く評価されています。特に暗部の沈み込みはLCDでは再現が難しく、映画やHDR映像では黒が「表示されない」のではなく「存在しない」感覚に近づきます。
| 項目 | Galaxy Tab S11 Ultra | 一般的な高級タブレット |
|---|---|---|
| パネル方式 | Dynamic AMOLED 2X | IPS LCDまたはMini LED |
| HDRピーク輝度 | 1,600ニト | 600〜1,000ニト前後 |
| 実用最大輝度 | 約1,000ニト(HBM) | 約500〜600ニト |
この1,600ニトという数値は、HDR動画再生時のハイライト表現で真価を発揮します。太陽光の反射や金属のきらめきが白飛びせず、立体感を保ったまま表示されます。Tom’s Guideなどの実測レビューによれば、HDR時の輝度制御は非常に安定しており、**数値だけを誇張したピーク性能ではなく、映像全体のバランスを重視したチューニング**である点が評価されています。
一方で、クリエイターや屋外作業者にとって重要なのはHBM時の1,000ニトです。従来の600ニト級タブレットでは、窓際や屋外で画面が白っぽく見え、色判断が難しい場面がありました。本機では強い外光下でも階調が保たれ、**カフェのテラス席や移動中の車内でも作業が成立するレベル**に到達しています。Samsungが公式にうたう反射防止コーティングも効果的で、黒が浮かず、OLED特有の高コントラストを維持したまま映り込みを抑えています。
色域の広さも特筆すべき点です。測定データではDCI‑P3を大きく超えるカバー率を示し、発色は非常に鮮烈です。ただしプロ用途では過度な彩度がリスクになるため、ナチュラル設定での運用が現実的です。色差はDelta E 0.25と報告されており、**適切な設定を前提とすれば、タブレットの域を超えた表示精度**を実現しています。Dynamic AMOLED 2Xと1,600ニトの組み合わせは、単なるスペック競争ではなく、使う場所と用途を広げる実用的な進化だと言えます。
5.1mm極薄ボディに詰め込まれた設計と拡張性

厚さ5.1mmという数値は、単なる薄さのアピールではなく、Galaxy Tab S11 Ultraの設計思想そのものを象徴しています。14.6インチという巨大ディスプレイを備えながら、一般的なノートPCや従来の大型タブレットとはまったく異なる取り回しを実現しており、実際に手に取ると「画面だけを持っている」ような錯覚すら覚えます。Samsung Electronicsによれば、この薄型化は携帯性の向上だけでなく、長時間の手持ち作業における疲労軽減を主目的に設計されたものです。
この極薄ボディを成立させるために採用されたのが、強化アルミ素材であるアーマーアルミニウムです。素材強度を高めることでフレーム自体を薄くでき、内部スペースを最小限に抑えながらも、ねじれやたわみに対する耐性を確保しています。実機レビューでも、中央を持っても不安を感じにくい剛性が確認されており、薄さと安心感を両立している点は高く評価されています。
注目すべきは、これほど薄型でありながら拡張性を犠牲にしていない点です。物理ポートはUSB Type-Cが1基のみですが、このポートは充電、データ転送、映像出力をすべて担います。DisplayPort Alternate Modeに対応しているため、外部モニターへ直接映像出力でき、タブレット単体では不足しがちな作業領域を容易に拡張できます。
さらに、競合製品との差別化として重要なのがmicroSDカードスロットの存在です。GSMArenaの仕様情報によれば、最大1.5TBクラスのカードに対応しており、本体ストレージを圧迫することなく大量のデータを扱えます。4K動画素材や高解像度の制作データを頻繁に持ち運ぶユーザーにとって、この仕様は日常的な運用コストを大きく左右します。
| 設計要素 | Galaxy Tab S11 Ultra | 設計上の意味 |
|---|---|---|
| 本体厚さ | 5.1mm | 大型画面でも高い携帯性を確保 |
| 外部ポート | USB Type-C×1 | 充電・映像出力・拡張を集約 |
| ストレージ拡張 | microSD対応 | 大容量データを低コストで管理 |
AppleのiPad Proが完全に内蔵ストレージ依存であるのに対し、Galaxy Tab S11 Ultraは薄型化と引き換えに拡張性を切り捨てる選択をしていません。この点は、ハードウェアを長期運用するユーザーや、用途に応じて柔軟に構成を変えたい層にとって大きな安心材料です。極薄ボディの中に、実用性を支える余地をきちんと残していることこそが、本機の設計を単なるデザイン競争から一段引き上げています。
MediaTek Dimensity 9400+の性能をベンチマークから読み解く
MediaTek Dimensity 9400+の実力を客観的に把握するうえで、ベンチマーク結果は避けて通れません。Galaxy Tab S11 Ultraに搭載された本チップは、TSMCの第2世代3nmプロセスで製造され、全コアが高性能コアで構成されるAll Big Core設計を採用しています。設計思想そのものがピーク性能を重視しており、その狙いは数値にも表れています。
まずCPU性能を見ると、Geekbench 6のスコアでは、Dimensity 9400+はAndroidタブレットとして非常に高い水準にあります。PhoneArenaやGeekbench Browserの集計によれば、シングルコアで約2,650前後、マルチコアで約8,500台を記録しています。これは従来のSnapdragon 8 Gen 3搭載機を明確に上回る結果であり、**Android陣営の中では最上位クラスの計算性能**と言って差し支えありません。
| チップセット | Geekbench 6 シングル | Geekbench 6 マルチ |
|---|---|---|
| Dimensity 9400+ | 約2,650 | 約8,560 |
| Apple M4 | 約3,720 | 約13,280 |
一方で、同じベンチマークをiPad Proに搭載されるApple M4と比較すると、差は明確です。特にシングルコア性能では約40%、マルチコアでは約50%以上の開きがあり、Webレンダリングや一部アプリの処理速度、動画書き出し時間といった場面ではAppleシリコンの優位性が数値として裏付けられています。Tom’s Guideなどの専門メディアも、日常操作のキビキビ感ではM4が依然として別次元であると評価しています。
GPU性能に目を向けると、3DMark Wild Life ExtremeなどのテストでDimensity 9400+はピークスコアではかなり健闘しています。しかし重要なのは持続性能です。Galaxy Tab S11 Ultraは厚さ5.1mmという極薄筐体のため、長時間高負荷をかけるとサーマルスロットリングが発生しやすく、LowスコアではiPad Pro M4との差が広がります。PhoneArenaの検証では、安定性を示す数値で約2,000ポイント近い差が確認されています。
この結果から読み取れるのは、Dimensity 9400+は短時間の高負荷処理や瞬間的なレスポンスでは非常に強力である一方、**長時間連続で最大性能を維持する用途では制約が出やすい**という特性です。ベンチマークは単なる数字の比較ではなく、薄型タブレットというハードウェア条件と組み合わせて解釈することで、実際の使用感に直結する示唆を与えてくれます。
SペンとWacom EMRが支持される理由
Galaxy Tab S11 Ultraがクリエイター層から根強く支持される最大の理由は、SペンとWacom EMR方式の組み合わせにあります。単なる付属スタイラスではなく、長年プロの現場で培われてきたペン入力技術が、そのままタブレット体験に落とし込まれている点が評価されています。
Wacom EMRは電磁誘導方式を採用しており、ペン側にバッテリーを必要としません。そのため充電切れという概念が存在せず、描きたい瞬間に即座に作業へ入れます。特に締切前の制作や長時間のラフ出しにおいて、この安心感は想像以上に大きいです。Wacom公式の技術解説でも、EMRは入力の安定性と長期使用を重視する設計思想であると説明されています。
初期反応荷重が極めて低い点も、Sペンが評価される重要な理由です。画面に軽く触れた段階で線が入り、筆圧を抜くと自然に線が消えていく挙動は、アナログの鉛筆やGペンに近い感覚です。筆圧の弱いユーザーや、繊細な入り抜きを多用するイラストレーターほど、この差を明確に体感します。
| 項目 | Sペン(Wacom EMR) | 一般的な充電式ペン |
|---|---|---|
| 電源 | 不要 | 内蔵バッテリー |
| 初期反応 | 非常に低い | やや筆圧が必要 |
| 長時間使用 | 安定 | 充電残量に依存 |
ペン先素材にも思想の違いが表れています。Sペンはエラストマーを含む柔らかめの芯を採用しており、ガラス面でも適度な摩擦が生まれます。このため、ペーパーライクフィルムを貼らなくてもコントロールしやすく、線が滑りすぎません。Apple Pencilの硬質な描き味が合わないユーザーが、Sペンに移行するケースが多い理由でもあります。
さらにEMR方式の強みとして、Wacom製ペンとの互換性が挙げられます。実際に海外コミュニティでは、Wacom Oneペンを組み合わせることで重心バランスや太さを調整し、自分好みの描画環境を構築している事例が多数報告されています。これはWacomが長年プロ向け液晶ペンタブレットを供給してきた実績があるからこそ成立するエコシステムです。
Sペンが支持される本質は、スペック表では測れない「描き続けられる感覚」にあります。反応の確実さ、物理的な安心感、道具としての信頼性が積み重なり、結果としてGalaxy Tab S11 Ultraはデジタルキャンバスとして選ばれ続けています。
Clip Studio Paintでのイラスト制作は快適か
Clip Studio Paintでのイラスト制作が快適かどうかは、Galaxy Tab S11 Ultraの評価を左右する重要なポイントです。結論から言えば、2Dイラストやマンガ制作を中心とするユーザーにとっては、非常に快適な作業環境が実現されています。
まずパフォーマンス面ですが、16GB RAMを搭載した上位モデルでは、A4サイズ350dpiやB4原稿といった商業制作レベルのキャンバスでも、レイヤー数を過度に気にせず作業できます。Dimensity 9400+のCPU性能は、Clip Studio Paintのブラシ処理やレイヤー合成といった2D作画用途では十分以上で、通常のペン入れや着彩工程で遅延を感じる場面はほとんどありません。
実際、Clip Studio公式サポートでも、描画遅延の主因は端末性能不足よりもメモリ設定やUndo回数にあるとされています。Galaxy Tab S11 Ultraは物理メモリに余裕があるため、これらを適切に調整すれば安定した動作を維持しやすい点が強みです。
| 作業内容 | 快適度 | 補足 |
|---|---|---|
| A4/B4原稿のペン入れ | 非常に快適 | 筆圧感知と追従性に優れる |
| 大量レイヤーの着彩 | 快適 | 16GB RAMモデル推奨 |
| 3D素材の多用 | やや注意 | iPad Proより負荷に弱い傾向 |
描き心地の面では、Wacom EMR方式のSペンが大きなアドバンテージになります。初期反応荷重が非常に低く、画面に触れた瞬間から線が出るため、入り抜きの表現が多い線画作業と相性が抜群です。ガラス面でも適度な摩擦があり、長時間描いても手首が疲れにくいという声が、国内外のクリエイターコミュニティで多く見られます。
一方で、万能ではありません。数百ピクセルを超える巨大ブラシを使用した特殊効果や、複雑な3Dモデルを配置したシーンでは、処理落ちを感じるという報告があります。Tom’s GuideやPhoneArenaの検証でも、持続的な高負荷処理ではApple M4搭載iPad Proの方が安定していると指摘されています。この点は、Clip Studio Paintを3Dレイアウトや高度な演出用途までフル活用するユーザーにとって注意点です。
それでも、14.6インチという広大な作業領域は、Clip Studio Paintとの相性が抜群です。ツールパレットやレイヤーウィンドウを常時表示したままでもキャンバスが狭くならず、PCに近いレイアウトで没入感を保ったまま描き続けられる体験は、他のタブレットでは得がたい魅力です。
総合すると、Galaxy Tab S11 UltraはClip Studio Paintを使ったイラスト制作において、「快適さ」と「描き心地」を最優先するユーザーにとって、現時点でAndroid最高峰の選択肢と言えます。
One UI 8とGalaxy AIが変える制作ワークフロー
One UI 8とGalaxy AIの組み合わせは、Galaxy Tab S11 Ultraを単なる高性能タブレットから、制作フローそのものを再設計するツールへと押し上げています。特に注目すべきは、OSレベルでAI機能が深く統合された点で、アプリ単体の便利機能とは異なり、日常的な作業の流れに自然に溶け込む設計が意識されています。
Android 16をベースとするOne UI 8では、入力、整理、発想という制作の前工程が大きく効率化されています。例えば、複数アプリを行き来しながら行っていた資料確認やメモ取りは、分割画面やポップアップ表示のレスポンス向上により、思考を中断せずに継続できます。Googleの公式ドキュメントでも示されているように、Android 16は大画面デバイスでのマルチタスク最適化を重要テーマとしており、Samsungはこれを独自UIでさらに推し進めています。
Galaxy AIの中核となる機能の一つがDrawing Assistです。これはラフな線や形状をAIが認識し、整ったビジュアルへ補正する支援機能で、Samsung公式発表によればアイデアスケッチや構図検討を想定した設計とされています。完成原稿をAIに任せるものではなく、あくまで初動を加速させる役割に徹している点が、プロ用途でも受け入れられやすい理由です。
| 工程 | 従来の操作 | One UI 8+Galaxy AI |
|---|---|---|
| アイデア出し | 手描きラフを何度も描き直す | ラフをAI補正して方向性を素早く確認 |
| 資料整理 | アプリ切替で思考が分断 | 分割画面で同時参照が安定 |
| 初期レイアウト | 試行錯誤に時間がかかる | 補助提案を起点に調整へ集中 |
また、7年間のOSアップデート保証も制作ワークフローの観点では重要です。米Samsung Newsroomによれば、長期サポートは法人利用やプロフェッショナル用途を強く意識した方針とされています。制作環境は一度構築すると頻繁に変えにくいため、数年単位で同じ操作体系とAI機能を使い続けられる安心感は、結果的に学習コストの削減につながります。
One UI 8とGalaxy AIがもたらす最大の変化は、作業速度そのものよりも思考の連続性です。ツール操作に意識を割かず、発想から形にするまでの流れを途切れさせない設計は、ハードウェア性能だけでは実現できません。Galaxy Tab S11 Ultraは、このソフトウェア体験によって、制作に集中できる時間を確実に増やしてくれる存在になっています。
Samsung DeX仕様変更がユーザー体験に与える影響
Samsung DeXの仕様変更は、Galaxy Tab S11 Ultraのユーザー体験を語る上で避けて通れない重要な転換点です。従来のDeXは、タブレット単体でPCライクなデスクトップ環境を実現する点に価値がありましたが、One UI 8ではその前提が大きく揺らいでいます。
特に影響が大きいのは、タブレット単体で完結していた作業スタイルです。従来はカフェや移動中でも、タスクバーとウィンドウ管理を活用し、ノートPCに近い感覚で作業できました。しかし現在は、外部ディスプレイ接続時のみデスクトップUIが有効になる挙動へと変わり、単体利用ではAndroid標準のマルチタスクに統合されています。
| 項目 | 従来のDeX | One UI 8以降 |
|---|---|---|
| 単体利用 | デスクトップUI対応 | 非対応 |
| 外部モニター接続 | オプション | 事実上必須 |
| 操作感 | PCライク | Android準拠 |
この変更により、ライトユーザーにとっては操作体系がシンプルになった一方、パワーユーザーほど不満を抱きやすい構造になっています。RedditのSamsung DeXコミュニティでは、「後退」「生産性が下がった」という声が目立ち、特にウィンドウの自由配置や即時切り替えを多用していた層ほど影響を強く受けています。
一方でSamsung側の意図も読み取れます。Android 16ではGoogleが公式にデスクトップモードの統合を進めており、Samsungは独自実装のDeXを縮小し、将来的な標準化へ寄せている可能性があります。Samsung公式発表や業界メディアの分析によれば、長期的な互換性と保守性を重視した判断とも考えられます。
ユーザー体験の観点で重要なのは、この変更が「使えなくなった」のではなく「前提条件が変わった」点です。外部モニターを常用する環境では、従来同様のデスクトップ体験を維持できますが、タブレット単体で完結したワークフローを求めるユーザーには、使用シーンの再設計が求められます。
結果として、DeXは万人向けの万能機能から、環境を整えた人向けの拡張機能へと性格を変えました。この変化をどう評価するかは、ユーザー自身の作業スタイルと周辺機器への依存度によって大きく分かれると言えるでしょう。
iPad Pro M4との比較で見える強みと弱み
Galaxy Tab S11 UltraをiPad Pro M4と並べて見たとき、最も分かりやすい差は「思想の違い」です。AppleはSoC性能とOS統合による万能性を磨き続け、Samsungは作業領域と入力体験を極限まで拡張する方向に舵を切っています。この違いが、強みと弱みを明確に分けています。
まず強みとして際立つのが14.6インチという圧倒的な画面サイズです。iPad Proの最大13インチと比べても、表示領域は体感で一段広く、イラスト制作や動画編集ではUIを常時表示したまま作業できます。PhoneArenaなどの比較レビューでも、キャンバス余白の余裕は生産性に直結すると評価されています。
| 項目 | Galaxy Tab S11 Ultra | iPad Pro M4 |
|---|---|---|
| 画面サイズ | 14.6インチ AMOLED | 最大13インチ OLED |
| ペン方式 | Wacom EMR(充電不要) | Apple Pencil(充電式) |
| 外部ストレージ | microSD対応 | 非対応 |
Sペンの存在も明確なアドバンテージです。WacomのEMR方式による低い初期反応荷重は、線の入り抜きを重視する描写で真価を発揮します。Redditや国内イラストレーターの声でも「紙に近い感覚」という評価が多く、描く行為そのものの快適さではiPad Proを上回ると感じるユーザーが一定数います。
一方で弱みは、処理性能と安定性です。Geekbenchなどの公開ベンチマークによれば、M4チップはシングル・マルチともにDimensity 9400+を大きく引き離しています。この差は日常操作では目立ちにくいものの、長時間の動画書き出しや3D処理では顕在化します。薄型筐体ゆえのサーマルスロットリングにより、持続性能ではiPad Proに軍配が上がります。
またソフトウェア面では、iPadOSの成熟度が依然として強力です。Apple公式ドキュメントや開発者カンファレンスでも示されている通り、M4世代ではFinal CutやProcreateなどがSoC性能を最大限活かす設計になっています。対してGalaxy Tab S11 Ultraは、DeX仕様変更の影響で「PC的な使い方」を期待していた層ほど戸惑いを感じやすい状況です。
総じて、広大な作業空間と描画体験を最優先するならGalaxy Tab S11 Ultra、処理性能とアプリ最適化による安定した万能性を求めるならiPad Pro M4という構図が浮かび上がります。どちらが優れているかではなく、何を最優先するかで評価が真逆になる比較だと言えるでしょう。
参考文献
- GSMArena:Samsung Galaxy Tab S11 Ultra – Full tablet specifications
- ケータイ Watch:「Samsung Galaxy Tab S11 Ultra」クイックフォトレビュー
- Samsung公式サイト:Samsung Galaxy Tab S11 Ultra Features & Specs
- Tom’s Guide:I tested the Samsung Galaxy Tab S11 Ultra for a week
- PhoneArena:Samsung Galaxy Tab S11 Ultra vs iPad Pro M4
- Samsung Newsroom:Samsung Unveils Galaxy Tab S11 Series
